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執行コスト分析(IS法)とは|定義・公式とアクチュアリー試験の関連問題 | acpass
投資理論・用語・株式投資分析
ひとことで言うと 買うと決めた瞬間の価格で全部買えていたら、という仮想の成績と、実際の成績の差を「取引で失ったもの」として測るのがIS法です。差は時間の流れに沿って発生するので、決めてから注文が市場に届くまで、注文が届いてから約定するまで、最後まで約定しなかった分、の3つの区間と、手数料・税金に分けて読みます。
数式で表すと IS=(ペーパー・ポートフォリオの損益)−(実際のポートフォリオの損益)
投資を決めた時点の価格で全量を即座に売買できたと仮定した仮想のポートフォリオ(ペーパー・ポートフォリオ)と実際のポートフォリオの成果の差をインプリメンテーション・ショートフォール(IS)と呼び、それを発生の理由ごとに分けて測る枠組み。決定から発注が市場に届くまでの値動きをタイミング・コスト、発注後に自分の注文が価格を動かした分をスプレッド・コストとマーケット・インパクト・コスト、約定できなかった数量が逃した値動きを機会コスト、手数料・税金を明示的コストとして区別する。運用手法の選び方(インデックス運用・アクティブ運用)とその評価指標は扱わない。
【ISの定義】
投資を決めた時点の価格で、決めた数量をすべて即座に売買できたと仮定した仮想のポートフォリオをペーパー・ポートフォリオと呼びます。インプリメンテーション・ショートフォール(IS)は
IS =(ペーパー・ポートフォリオの損益)−(実際のポートフォリオの損益)
です。実際の取引は遅れ、価格を動かし、全量は約定しないこともあるので、実際の成績はペーパー・ポートフォリオより悪くなり、その差がコストです。
【3つの時点と区間】
買い注文で考えます。決定時点の価格を P d P_d P d 、発注が市場に届いた時点の価格を P 0 P_0 P 0 、平均約定価格を P e P_e P e
試験に出る性質 10年で1回・2022年度に1.0点
2022年度の問題15(3)で、3つの時点(決定・発注到達・約定)の間の価格変動と、全量約定のときにゼロになるコストの名前を、空欄3つに当てはめさせた。計算は求められていない。
選択肢に似た名前のダミーが並ぶ
実際の出題では、正解のタイミング・コスト、マーケット・インパクト・コスト、機会コストのほかに、明示的コストや暗示的コスト、手数料・税金などの語が選択肢に並んだ。区間と定義の対応で選び分ける。
株式投資分析の大問の最後の小問だった
同じ大問の前半はサステイナブル成長率や配当割引モデル、経済的付加価値(EVA)で、執行コストは運用の実行段階を問う最後の小問として置かれていた。
例で見る ある投資家が株価 800 800 800 円のときに 10,000 10{,}000 10 , 000 株の購入を決めました。注文が市場に届いたときの株価は 806 806 806 円で、そこから 8,000 8{,}000 8 , 000 株が平均 812 812 812 円で約定し、残りの 2,000 2{,}000 2 , 000
つまずきポイント タイミング・コストとマーケット・インパクト・コストを入れ替える。境目は発注が市場に届いた瞬間で、その前の値動きは自分の注文が起こしたものではない。 機会コストを約定した数量に掛ける。機会コストは約定しなかった数量が逃した値動きで、掛けるのは N − n N-n N − n である。 全量が約定したら明示的コストもゼロになると考える。ゼロになるのは機会コストだけで、手数料や税金は約定した分に必ず発生する。 スプレッド・コストを独立した区間だと思う。スプレッド・コストはマーケット・インパクト・コストと並んで、発注が届いてから約定するまでの同じ区間を作る要素である。 売り注文でも買いと同じ符号で差を取る。売りでは価格の下落が不利な方向なので、各区間の差の向きが逆になる。 定着クイズ Q1 IS法で、投資を決めた時点から、発注が市場に届いた時点までの価格変動に対応するコストはどれか。
A. マーケット・インパクト・コスト B. タイミング・コスト C. 機会コスト D. 明示的コスト
Q2 株価 500 500 500 円で 4,000 4{,}000 4 , 000 株の購入を決め、発注が届いた時点の株価は 505 505 505 円、 3,000 3{,}000 3 , 000 株が平均 510 510 510 円で約定し、残りは約定しなかった。評価時点の株価は 520 520 520 円である。機会コストはどれか。
A. 10,000 10{,}000 10 , 000 円 B. 15,000 15{,}000 15 , 000 円 C. 20,000 20{,}000 20 , 000 円 D. 60,000 60{,}000 60 , 000 円 A. 全量が約定すれば、明示的コストはゼロになる。 B. スプレッド・コストは、決定から発注までの区間で発生する。 C. 約定期間中の出来高加重平均価格(VWAP)と比べる方法では、タイミング・コストは測れない。 D. マーケット・インパクト・コストは、約定しなかった数量について発生する。
、決めた数量を
、約定した数量を
、評価時点の価格を
とします。
・タイミング・コスト(遅延コスト)=決定から発注が届くまでに市場が動いた分で、
n ( P 0 − P d ) n\,(P_0-P_d) n ( P 0 − P d ) です。投資家はまだ1株も売買していないので、自分の注文が原因ではありません。
・スプレッド・コストとマーケット・インパクト・コスト=発注が届いてから約定するまでの分で、合わせて
n ( P e − P 0 ) n\,(P_e-P_0) n ( P e − P 0 ) です。気配の幅(買値と売値の差)を払う分がスプレッド・コスト、自分の注文が価格を押し上げた分がマーケット・インパクト・コストです。
・機会コスト=約定しなかった
株が逃した値動きで、
( N − n ) ( P T − P d ) (N-n)\,(P_T-P_d) ( N − n ) ( P T − P d ) です。全量が約定すればゼロになります。
・明示的コスト=手数料と税金で、約定した分には必ず発生します。
上の3つは価格の中に隠れているので暗示的コストとまとめて呼びます。
【売り注文では向きが逆になる】
売り注文では、決定後に価格が下がるほど不利になります。各区間の差は「決定時点より不利な方向に動いた分」として、符号を買いと逆にして読みます。
【ほかのベンチマークとの違い】
約定期間中の市場の出来高加重平均価格(VWAP)と比べる方法は、発注が届いた後の執行の巧拙を測りますが、決定から発注までの遅れ(タイミング・コスト)と約定しなかった分(機会コスト)は測れません。IS法は決定時点を基準にするので、これらも含めて測れます。
株は約定しないまま終わりました。評価時点の株価は
円、手数料は
株
円です。
タイミング・コストは 8,000 × ( 806 − 800 ) = 48,000 8{,}000\times(806-800)=48{,}000 8 , 000 × ( 806 − 800 ) = 48 , 000 円、スプレッドとマーケット・インパクトを合わせたコストは 8,000 × ( 812 − 806 ) = 48,000 8{,}000\times(812-806)=48{,}000 8 , 000 × ( 812 − 806 ) = 48 , 000 円、機会コストは 2,000 × ( 830 − 800 ) = 60,000 2{,}000\times(830-800)=60{,}000 2 , 000 × ( 830 − 800 ) = 60 , 000 円、明示的コストは 8,000 8{,}000 8 , 000 円で、合計 164,000 164{,}000 164 , 000 円です。
検算すると、ペーパー・ポートフォリオの損益は 10,000 × ( 830 − 800 ) = 300,000 10{,}000\times(830-800)=300{,}000 10 , 000 × ( 830 − 800 ) = 300 , 000 円、実際の損益は 8,000 × ( 830 − 812 ) − 8,000 = 136,000 8{,}000\times(830-812)-8{,}000=136{,}000 8 , 000 × ( 830 − 812 ) − 8 , 000 = 136 , 000 円で、差は 164,000 164{,}000 164 , 000 円になり一致します。