ティーレの公式とは|定義・公式とアクチュアリー試験の関連問題 | acpass年金数理・定理・積立金の推移
ひとことで言うと
ファクラーの再帰式(1年刻み)の刻みをゼロにした連続版。給与1あたりの責任準備金が時間とともにどう変わるかを、保険料・利息・脱退・昇給・脱退給付の5項で書く。年金数理版は生命保険数理版に「昇給力による目減り」の1項が加わるところが違う。
保険料・利息・脱退による配分の3項が増やし、昇給と脱退給付の2項が減らす。脱退力は増やす側と減らす側に1回ずつ現れ、昇給力の項だけが生命保険数理版に無い。
数式で表すと
dtdtVx=Pt+δtVx+μx+ttVx−λx+ttVx−st(x)μx+t ティーレの公式は、給与1あたりの責任準備金の変化率を表す微分方程式である。
dtdtVx=Pt+δtVx+μx+ttVx−λx+ttVx−st(x)μx+t
試験に出る性質
年金数理版と生命保険数理版の差は昇給力の1項だけ
生保のティーレ dtdtV=δtV+P−μ(S−tV)
例で見る
<計算の前提>
・利力 δ=0.05、脱退力 μ=0.10、昇給力 λ=0.03 がいずれも一定
・脱退(定年到達を含む)のとき、最終給与の3倍の一時金を支給する(s=3
つまずきポイント
- δ(利力)と i(利率)を混同しない。δ=log(1+i) であり、数値をそのまま入れ替えると合わない。
- 脱退力 μ は2回現れる。+μtVx
定着クイズ
Q1年金数理のティーレの公式が、生命保険数理のティーレの公式に対して余分に持っている項はどれか。
Q2ティーレの公式に脱退力 μx+t が2回現れることについて、正しい記述はどれか。
Q3利力 δ=0.05、脱退力 μ=0.10、昇給力 λ=0.03 が一定、脱退給付は最終給与の3倍(s=3)で一定、給与1あたりの保険料率は P=0.455165 とする。t=5 での給与1あたり責任準備金が 1.063031 のとき、dtdtVx に最も近いものはどれか。
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給与1あたりの責任準備金が時間とともにどう変化するかを表す連続時間の式。ファクラーの再帰式(NEN056=離散)の連続版で、保険料の払い込みによる増加・利息による増加・脱退による相対的な増加・昇給による相対的な減少・脱退給付の支払いによる減少の5項からなる。
・Pt:保険料が払い込まれるぶん増える
・δtVx:利息が付くぶん増える(δ は利力)
・μx+ttVx:脱退した人の持分が残った人に配分されるぶん、1人あたりでは増える
・−λx+ttVx:給与が上がるぶん、給与1あたりで見ると目減りする(λ は昇給力)
・−st(x)μx+t:脱退した人に給付を払うぶん減る(st(x) は給与1あたりの給付倍率)
脱退力 μ が2回出るところが山である。1回目は残存者への配分、2回目は給付の支払いで、向きが逆である。
集団の責任準備金の総額を W(t)=tVx⋅l(t)⋅b(t)(l は残存者数、b は給与指数)と置く。総額の動きは
dtdW=δW+Plb−μlbs
である(利息で増え、保険料で増え、脱退給付で減る)。左辺を積の微分で開き、l′=−μl、b′=λb を使うと
dtdW=lb(dtdtVx−μtVx+λtVx)
となる。両辺を lb で割れば上の式になる。−μV と +λV が移項して +μV と −λV になる、ここがこの導出の要点である。
dtdtV=δtV+P−μx+t(S−tV)
で、展開すると P+δtV+μtV−μS になる。年金数理版との差は −λtVx の1項だけである。年金数理では責任準備金を給与1あたりで持つので、分母の給与が伸びるぶんを引く必要がある。生保の式をそのまま持ってくると昇給力のぶんだけ合わない。
2021年度問題3は、(1)で離散モデルからファクラーの再帰式(NEN056)を導かせ、(2)で連続モデルからティーレの公式を導かせる対の構成になっている(各8点)。(2)は導出過程の空欄10個を、対数・保険料率・利力・脱退力・昇給力の項の選択肢から選ぶ形である。式を丸暗記しても空欄は埋まらない。各項がどの操作から出てきたかを言えるようにしておく。
を展開すると
P+δV+μV−μS になる。年金数理版はこれに
−λtVx が加わる。責任準備金を給与1あたりで持つので分母が伸びるぶんを引く、という理由まで言えるようにする。
2021年度問題3は離散と連続の対で出た
(1)が離散モデルからファクラーの再帰式を導く空欄14個(8点)、(2)が連続モデルからティーレの公式を導く空欄10個(8点)で、同じ制度設定を刻み幅だけ変えて2回問うている。片方だけ準備すると(2)で手が止まる。
係数が一定なら閉形式で解ける
k=δ+μ−λ と置くと dtdV=kV+(P−μs) で、V(0)=0 なら V(t)=kP−μs(ekt−1) になる。将来法の積分で出した値と一致するので、どちらか一方で解いてもう一方で検算できる。
脱退力が両側に出るのは配分と支払いが別物だから
1人あたりで見ると、脱退者が抜けた瞬間にその人の持分が残った人に配分される(増える)。同時に、脱退者へ給付を支払う(減る)。この2つを1項にまとめると符号を取り違える。生保数理の μ(S−tV) という書き方は、この2つを差でまとめた形である。
空欄補充で出るので各項の出どころを言えるようにする
本試験は完成した式ではなく導出の途中式を空欄にする。総額 W=Vlb を微分し、l′=−μl・b′=λb を代入し、lb で割る、という3手を順に書けるかどうかで決まる。
・一定)
・加入から定年までは10年、加入時の責任準備金は0
・給与1あたりの保険料率 P は連続払いで一定
係数をまとめて k=δ+μ−λ=0.12 と置く。
将来法で書くと、aˉ=0.121−e−0.12×10=5.823382 を使って
0=μsaˉ+e−1.2s−Paˉ=0.3×5.823382+0.301194×3−P×5.823382
P=5.8233821.747014+0.903583=0.455165
係数が一定なので dtdV=kV+(P−μs) であり、V(0)=0 から
V(t)=kP−μs(ekt−1)=0.120.155165(e0.12t−1)
t=10 で V(10)=3.000000 となり、定年時の給付倍率3にちょうど届く。t=5 では V(5)=1.063031 で、将来法の積分で計算しても同じ 1.063031 である。2つの経路が一致することが検算になる。
(3)5項の内訳を見る(t=5 の時点)
・保険料:P=0.455165
・利息:δV=0.05×1.063031=0.053152
・脱退による配分:μV=0.10×1.063031=0.106303
・昇給による目減り:−λV=−0.03×1.063031=−0.031891
・脱退給付:−sμ=−3×0.10=−0.300000
合計は 0.282728 で、閉形式の微分 (P−μs)e0.6=0.155165×1.822119=0.282728 と一致する。
同じ前提でファクラーの再帰式を刻み幅 h で回すと、h=1 年(10回)では V(10)=3.767029、h=0.1 年では 3.076073、h=0.001 年では 3.000760 と、刻みを細かくするほど連続版の 3.000000 に近づく。ティーレの公式が「ファクラーの極限」であることが数値でも見える。
−λV を落として(=生命保険数理版の式で)保険料を決めると P=0.429248 になり、正しい 0.455165 より約5.7 パーセント過小である。逆に正しい P のまま昇給力を無視して積み上げると V(10)=3.601566 となり、必要額3を2割も超える。1項の欠落が数パーセントでは済まない。
(残存者への配分)と
−st(x)μx+t (給付の支払い)で向きが逆である。片方だけにしない。
−λx+ttVx を落とすと生命保険数理版の式になる。年金数理では給与1あたりで持つので必ず要る。 st(x) は給与1あたりの給付倍率であって金額ではない。金額を入れると桁が合わない。 導出では l′=−μl と b′=λb が移項して符号が反転する。総額の式の符号のまま写さない。