ファクラーの再帰式(年金数理)とは|定義・公式とアクチュアリー試験の関連問題 | acpass年金数理・定理・積立金の推移
ひとことで言うと
責任準備金を1年ずつ前に進める再帰式。期初の責任準備金と保険料を利息で繰り上げ、その年度の脱退給付を差し引き、残った人数で割ると翌年度末の責任準備金になる。年金数理では給与指数でも割り戻すところが生命保険版との違いである。
期初の責任準備金と保険料を利息で繰り上げ、脱退給付を引き、残存者数と給与指数で割り戻す。給与指数の割り戻しが年金数理版の特徴である。
数式で表すと
(Vt+P)(1+i)=Vt+1px+t+Bqx+t ファクラーの再帰式は責任準備金を1年ずつつなぐ式である。給与1に対する責任準備金 Vt と標準保険料率 P を使うと、年金数理では
Vt+1=bx+1bx⋅lx+1lx{(1+i)(Vt+P)−lxdxBt+1}
試験に出る性質
年金数理版は給与指数の比が前に付く
Vt+1=bx+1bx⋅lx+1lx{(1+i)(Vt+P)−lxdxBt+1}
例で見る
<計算の前提>(2018年度問題1(8) と同一)
・中途退職者と定年退職者に「加入年数×脱退時の給与」の一時金を支給する制度を発足する
・加入年齢55歳、定年年齢60歳、予定利率 1.5 パーセント、給与1に対する標準保険料率は P=1.0
・第1年度の新規加入者は100人(1人あたり給与100,000円)、第2年度は80人(同95,000円)
・生存者数 l55=1,000,000
つまずきポイント
- 給与指数の比 bx+1bx を落とさない。生保数理のファクラーには無い項である。
- d
定着クイズ
Q1年金数理のファクラーの再帰式が、生命保険数理の形に対して余分に持っている項はどれか。
Q2「加入年数×脱退時の給与」を一時金として支給する制度にファクラーの再帰式を適用するとき、脱退給付の項について正しい記述はどれか。
Q3i=1.5 パーセント、P=1.0、V1=0.9683、l56=900,000、l57=800,000、b56=1.05、b57=1.10、第2年度の脱退給付は加入年数2年ぶんとする。給与1あたりの第2年度末責任準備金 V2 に最も近いものはどれか。
この用語を扱う問題(0)
関連問題は現在準備中です。
責任準備金を1年ずつ前進計算する再帰式。期首の責任準備金と保険料を利息で繰り上げ、脱退給付を差し引いて残存者で割ると翌期末の責任準備金になる。
となる(dx=lx−lx+1 は脱退者数、Bt+1 はその年度の脱退者1人あたり給付)。
・(1+i)(Vt+P):期初の責任準備金に保険料を足して1年運用する
・lxdxBt+1:その年度に脱退した人へ払う給付(脱退率×給付額)
・lx+1lx:残った人数で割り直す(生存者利得が残存者に配分される)
・bx+1bx:給与1あたりに直すための割り戻し
生保数理のファクラー(SEI033)は (tV+P)(1+i)=t+1Vpx+t+qx+t で給与指数が出てこない。年金数理では責任準備金と保険料を「給与1あたり」で持つので、分母の給与が1年で bx+1/bx 倍になるぶんを割り戻す必要がある。この1項を落とすと昇給率のぶん(数パーセント)ずれる。
制度発足直後は V0=0 から始めて1年ずつ進める。責任準備金の表が与えられずに「第2年度末の責任準備金を求めよ」と言われたときの唯一の道具である(2018年度問題1(8))。
d は割引率 1+ii にも使うが、ここでの dx は脱退者数である。本試験も同じ文字を両方の意味で使うので、添字の有無で読み分ける。
。責任準備金と保険料を給与1あたりで持つためである。生保数理の
(tV+P)(1+i)=t+1Vp+q をそのまま流用すると昇給率のぶんずれる。
責任準備金の表が与えられない設問で使う
2018年度問題1(8)(5点)は制度発足時の V0=0 から2年ぶん進めて第2年度末の責任準備金 23,733千円 を出させる。10年で本概念に当たるのは2行13.0点で、もう1本は2021年度問題3(1)(8点)=離散モデルでの導出そのものである(同年の(2)が連続版=NEN085)。
給付額が加入年数に比例するなら係数が毎年増える
第1年度末は「加入年数1年」、第2年度末は「加入年数2年」なので、脱退給付の係数が 1 から 2 に変わる。ここを固定したままにすると第2年度末が過小になる。
残存者数で割るのは生存者利得の配分
lx+1lx を掛けるのは、脱退者の持分が残った人に配分されるという意味である。B3 の加入時積立方式の説明で使った考え方と同じである。
、
l56=900,000 、
l57=800,000
・給与指数 b55=1.00、b56=1.05、b57=1.10
V1=1.051.00⋅900,0001,000,000{1.015×(0+1.0)−1,000,000100,000×1}=0.9683
脱退者への給付は「加入年数1年×給与」なので係数が1である。
V2=1.101.05⋅800,000900,000{1.015×(0.9683+1.0)−900,000100,000×2}=1.9067
第1年度加入者の第2年度末給与総額は 100×100,000×1,000,000800,000×1.001.10=8,800,000、第2年度加入者は 80×95,000×1,000,000900,000×1.001.05=7,182,000。したがって
0.9683×7,182,000+1.9067×8,800,000=23,733,000
で正答(H)23,733千円。在職2年目の集団に V2、在職1年目の集団に V1 を当てるという対応を間違えないこと。
b56b55 を落として計算すると V1=1.0167 になり、正しい 0.9683 の 1.05 倍。昇給率5 パーセントがそのまま誤差になる。
(割引率
)と
(脱退者数)は別物である。添字の有無で読み分ける。
脱退給付の係数(加入年数)は年度ごとに増える。第 t 年度末では t になる。 制度全体にするときは、在職年数の違う集団それぞれに対応する Vt を当てる。すべてに最新の V を掛けない。