動態的昇給率とベースアップとは|定義・公式とアクチュアリー試験の関連問題 | acpass年金数理・公式・給与・昇給
ひとことで言うと
1人の給与が実際に上がる率は、年齢が上がるぶん(静態的昇給率)とベースアップの掛け算で決まる。足し算ではないので、5パーセントと2パーセントで7.1パーセントになる。
静態的昇給率5.0パーセントとベースアップ率2.0パーセントの合成。赤い小さな四角が「昇給した給与にもベースアップが乗る」ぶんで、足し算では落ちる部分である。
数式で表すと
1+動態的昇給率=(1+静態的昇給率)(1+ベースアップ率) 実際に個人の給与が上がる率(動態的昇給率)は、静態的昇給率とベースアップ率の複合で決まる。ベースアップを見込むかどうかで標準保険料率が変わる。
1+(動態的昇給率)=(1+sx)(1+β)
sx
試験に出る性質
定義は掛け算
1+(動態)=(1+sx)(1+β)。5.0 と 2.0 で 7.0 ではなく 7.1 パーセントになる。
例で見る
<計算の前提> 静態的昇給率 5.0 パーセント、ベースアップ率 2.0 パーセント。共通トイモデルに定年時給与が要るので b60=1.157625(5.0 パーセントをもう1年延ばした値)まで使う。給付は定年到達時の給与に比例し、拠出も給与比例とする。
(1)動態的昇給率
(1+0.05)(1+0.02)−1=0.071
つまずきポイント
- 静態的昇給率とベースアップ率を足して動態的昇給率とする。掛け算なので必ず小さく出る。
- ベースアップを見込んでも給付と給与が同率で増えるから保険料率は変わらない、と考える。給付が遠い1点にある以上、比は動く。
- 給与指数の表にベースアップが入っていると思い込む。表は同一時点の断面なので入っていない。
定着クイズ
Q1静態的昇給率 sx、ベースアップ率 β のときの動態的昇給率を表す式として正しいものはどれか。
Q2静態的昇給率が毎年 5.0 パーセント、ベースアップ率が毎年 2.0 パーセントで一定のとき、57歳で給与 100 万円だった被保険者の59歳時点の給与に最も近いものはどれか。
Q3給付も拠出も給与に比例し、給付が定年到達時の給与に比例する制度において、全期間にわたるベースアップ率 β を新たに見込んだときの標準保険料率の変化として正しいものはどれか。
この用語を扱う問題(0)
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は静態的昇給率、
はベースアップ率。この式は定義であって近似ではない。
(1+0.05)(1+0.02)=1.071 であって 1.07 ではない。1年の差は 0.1 パーセントポイントだが、複利で効くので加入から定年までの20年30年では無視できない差になる。
ベースアップを見込むことは予定利率を下げることと同値
給付も拠出も給与に比例し、給付が定年到達時の給与に比例する制度では、ベースアップ率 β を全期間で見込むことは、予定利率を
1+i′=1+β1+i
へ引き下げることとちょうど同じになる。将来の給与も給付も同じ (1+β)t で膨らむので、割引率のほうを β ぶん重くしたのと区別がつかないからである。
給付は定年という遠い1点に立ち、拠出は加入から定年まで薄く広がっている。割引率を下げると遠い側のほうが大きく増えるので、ベースアップを見込むと標準保険料率は上がる。2017年度 問題1(2) は、ベースアップを 1.0 パーセント見込んだ場合の標準保険料率が見込まない場合の何倍になるかを問うている。
実績が予定を上回れば昇給差損失として財政決算に出る。2016年度 問題4(3)・2018年度 問題4(3)・2020年度 問題2(4) がいずれもこの損益を計算させている。
給付も拠出も給与比例で給付が定年時給与に比例するなら 1+i′=(1+i)/(1+β)。割引率の付け替えとして読める。
見込むと標準保険料率は上がる
給付は定年という遠い1点、拠出は全期間に広がる。割引率を下げると遠い側が大きく増えるため比が上がる。
静態と動態は使う場面が違う
給与指数の表・給与現価の重みは静態、個人の給与の実額推移は動態で追う。
見込み違いは昇給差損益になる
実績が予定を上回れば損失側に出る。2016年度 問題4(3)・2018年度 問題4(3)・2020年度 問題2(4) がこれを計算させている。
57歳の給与が 100 万円なら59歳では 100×1.0712=114.7041 万円。静態的昇給率だけなら 100×1.1025=110.25 万円で、差は 4.4541 万円である。
給付を 0.01×(定年時給与)×(加入期間3年) とする。ベースアップを見込まないとき、給与1あたりの
給付現価 =0.7×v3×10×0.03×1.157625=0.229080
給与現価 =1+v×0.9×1.05+v2×0.8×1.1025=2.774221
P=2.7742210.229080=0.082574
上の同値関係で 1+i′=1.02/1.02=1 すなわち i′=0、v′=1 になる。
給付現価 =0.7×1×10×0.03×1.157625=0.243101
給与現価 =1+0.9×1.05+0.8×1.1025=2.827000
P′=2.8270000.243101=0.085993
P′/P=1.041396 で、ベースアップを見込むと標準保険料率は約 4.14 パーセント高くなる。分子も分母も増えているのに比が上がるのは、給付が定年という遠い1点にあるからである。