モデリング・用語
ひとことで言うと
マルコフ連鎖を長時間動かしたときに行き着く、もう変化しない分布です。今その分布にいれば、1ステップ進めても同じ分布のままという性質(πP=π)をもちます。
こんなデータが従う
保険契約者の長期的な状態(継続・解約)の割合信用格付けの長期的な分布ウェブページのアクセス頻度の長期分布(PageRankの考え方)生死過程の長期的な個体数分布在庫状態の長期的な割合
マルコフ連鎖(concept: マルコフ連鎖)の長期的な振る舞いを記述する分布で、初期状態に依存しない「落ち着き先」を表します。
マルコフ連鎖が長時間後に落ち着く分布π。πP=πを満たし、推移を1ステップ進めても同じ分布のまま。
数式で表すと
πP=π, ∑πi=1
πP=π を満たす不変分布。生死過程では詳細釣り合いで解ける。
定常分布πは、推移行列Pに対して πP=π、かつ ∑iπi=1 を満たす確率分布です。この分布にいる状態で1ステップ推移させても、出てくる分布は元のπと変わりません。
既約性(すべての状態が互いに到達可能)と非周期性などの条件を満たすマルコフ連鎖では、初期分布に関係なく時間が経つと分布はこの定常分布πに収束します(P(n)→π as n→∞)。
特に出生死亡過程(生死過程)のような特殊な構造をもつマルコフ連鎖では、詳細釣り合い(隣り合う状態間の流入・流出の釣り合い)の条件を使うと、連立方程式を解かずに定常分布を求めることができます。状態数が少ない場合は、πP=πとΣπi=1の連立方程式を直接解くのが基本です。試験に出る性質
定義
πP=π, ∑iπi=1。
収束
既約・非周期などの条件下で初期分布に関わらずπに収束する。
求め方(一般)
πP=π と ∑πi=1 の連立方程式を解く。
求め方(生死過程)
詳細釣り合いの式を使うと簡単に解ける。
解釈
長時間後の各状態にいる確率(時間平均的な滞在割合とも解釈できる)。
例で見る
2状態(A,B)で推移確率P(A→B)=0.3, P(B→A)=0.4のとき、詳細釣り合い πA×0.3=πB×0.4 と πA+πB=1 を解くと πA=4/7, πB=3/7。
つまずきポイント
- 定常分布と初期分布を混同する(定常分布は長時間後の極限であり、初期状態の分布ではない)
- πP=πの行列の掛け方を取り違える(πは行ベクトルとして左から掛ける)
- 既約性・非周期性などの収束条件を確認せずに定常分布の存在・収束を仮定する
定着クイズ
定常分布πが満たす条件は?
定常分布に収束するために一般に必要な条件は?
生死過程で定常分布を簡単に求める方法は?