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モデリング・用語・マルコフ連鎖
連鎖を長く走らせたとき、「状態 に滞在していた時間の割合」が定常分布 に一致する、という大数の法則のような性質です。重要なのは、たとえ分布そのものが収束しなくても(極限分布が無くても)、この時間平均だけは に落ち着きうる、という点です。
周期例 P=\begin{psmallmatrix}0&1\\1&0\end{psmallmatrix} でも、状態0に滞在する時間の長期割合は で に収束し
エルゴード性とは、マルコフ連鎖を長時間走らせたときに、状態 に滞在した時間の長期的な割合(時間平均)が定常分布 に一致する性質です。式で書くと
定義
周期例 で状態0から出発すると、訪れる状態は
エルゴード性が主張する収束は?
周期例 でエルゴード性はどうなるか?
時間平均の収束(エルゴード性)に非周期性は必要か?
既約・非周期な連鎖で長期割合が定常分布に等しくなる性質。
この違いが最もはっきり出るのが、極限分布で使ったのと同じ周期2の反例です。 は状態0と1を確率1で交互に行き来します。極限分布で見たとおり は偶数で1・奇数で0と振動し、直接の極限は存在しませんでした。ところが時間平均で見ると話が変わります。状態0から出発すると、訪れる状態は と並び、 ステップのうち状態0にいる割合は が大きくなるにつれ に収束します。これは定常分布 にぴたりと一致します。つまり「一時点の分布は収束しない(極限分布は無い)のに、時間平均はちゃんと に一致する」——この対比こそが、エルゴード性を極限分布と別建てで学ぶ価値です。
非周期な比較例 ()では、極限分布が存在するうえに時間平均も当然 に一致するので、両者の区別が見えにくくなります。だからこそ周期例が教育的なのです。一般に、既約で正再帰的な(有限状態なら既約なだけで十分な)連鎖はエルゴード的で、時間平均は初期状態によらず に一致します。非周期性は極限分布には必須ですが、時間平均の収束(エルゴード性)には不要だ、というのが重要な含意です。実務的には、シミュレーションで を推定するとき、長く1本走らせて滞在割合を数える(時間平均をとる)という方法が正当化される根拠がエルゴード性です。MCMC(マルコフ連鎖モンテカルロ)が成り立つ理論的支柱でもあります。
大数の法則の連鎖版
独立標本の大数の法則を、相関のあるマルコフ連鎖の時間平均へ拡張したもの。
極限分布より弱い条件
時間平均の収束には非周期性が不要。周期があってもエルゴード性は成り立ちうる。
周期例での成立
P=\begin{psmallmatrix}0&1\\1&0\end{psmallmatrix} は極限分布が無いが、状態0の滞在割合は に収束する。
シミュレーションの根拠
1本の長い軌跡の滞在割合で を推定できる根拠。MCMCが機能する理論的支柱。
ステップ中に状態0にいる割合は で に収束し、定常分布 に一致する(エルゴード性)。
一方、同じ連鎖で直接の極限 は偶数で1・奇数で0と振動し存在しない(極限分布の不在)。
極限分布が無くても時間平均は に一致する、という対比がエルゴード性の要点。