計算基礎率の変更(予定利率引下げ等)とは|定義・公式とアクチュアリー試験の関連問題 | acpass年金数理・公式・財政再計算と制度変更
ひとことで言うと
予定利率や予定脱退率など、計算の土台になる率を変えること。予定利率を下げると将来の給付を割り引く力が弱くなるので、給付現価も責任準備金も保険料もいっせいに増える。
予定利率を下げても積立金の棒は伸びない。伸びるのは責任準備金の棒だけなので、はみ出した分がそのまま未積立債務になる。
数式で表すと
i↓ ⇒ S↑, V↑, U=V−F↑ 予定利率・予定脱退率・予定昇給率などを変えたときの給付現価・責任準備金・保険料の動き。予定利率の引下げは責任準備金を増やし未積立債務を生む。
計算基礎率のうち、答に最も大きく効くのは予定利率である。予定利率を i から下げると
・割引率 v=1+i1 が上がる
・年金現価率 a¨
試験に出る性質
予定利率の引下げは給付現価・責任準備金・標準保険料をすべて増やす
割引が弱くなるので将来のキャッシュフローの現価がいっせいに増える。積立金だけが動かないため、差額が未積立債務または剰余金の減少として現れる。
保険料が上がるのは分子の伸びが分母の伸びを上回るから
トイモデルでは S57 が 6.19 パーセント、G57
例で見る
<計算の前提>
・トイモデルの X 年度末(V0=92,775.95、F0=97,775.95
つまずきポイント
- 予定利率を下げたときに積立金が増えると考えない。運用実績と予定利率は別の量である。
- 責任準備金の増加率を保険料の増加率と同じだと思わない。トイモデルでは責準が 4.67 パーセント、保険料が 5.72 パーセント増えており一致しない。
- 年金現価率 a¨60 を据え置いたまま給付現価だけ割り引き直さない。予定利率は年金現価率の中にも入っている。
- 予定脱退率を下げると給付現価が減ると考えない。中途脱退者に給付が無い制度では、脱退が減るほど定年到達者が増えて給付現価は増える。
定着クイズ
Q1予定利率を引き下げたときの給付現価・責任準備金・標準保険料の動く向きとして、正しいものはどれか。
Q2予定利率の引下げで給付現価 S57 が 6.19 パーセント、人数現価 G57 が 0.45 パーセント増えた。標準保険料の変化として最も近いものはどれか。
Q3予定利率の引下げによる給付現価の増え方について、正しい記述はどれか。
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が上がる
・給付現価
が上がる
・責任準備金
が上がる
・標準保険料
が上がる
という向きに全部が同じ側へ動く。積立金は動かないので、その差が未積立債務になって現れる。
給付現価の増え方は給付を受け取るまでの期間が長いほど大きい。年金受給権者はいま受け取っている最中なので影響が小さく、若い在職者ほど影響が大きい。人数現価 G も上がるが、保険料の払込期間は給付期間より短いので分子の伸びが分母の伸びを上回り、保険料は必ず上がる。
予定脱退率を下げれば定年到達者が増えるので給付現価が増える。予定昇給率を上げれば給与比例制では給付も給与現価も増える。どの率を動かしても、まず給付現価と人数現価のどちらがどれだけ動くかを分けて考えるのが手順である。
給付利率や予定利率の引上げは剰余金を生む。2022年度問題2(4)(ウ)は引上げによって発生する剰余金を問うており、向きが逆なだけで手順は同じである。
が
パーセント伸び、
は
パーセント上がった。給付期間のほうが払込期間より先にあるので、この向きは一般に成り立つ。
影響の大きさは受け取るまでの期間が長い者ほど大きい
年金受給権者より在職者、在職者のなかでも若い者ほど給付現価の伸びが大きい。単一の倍率で責任準備金を割り増して済ませることはできない。
引上げは剰余金を生む
2022年度問題2(4)(ウ)は予定利率と給付利率の引上げにより発生する剰余金を問うている。向きが逆なだけで手順は同じで、責任準備金の減少額がそのまま剰余金になる。
発生した未積立債務は特別保険料で償却する
2025年度問題3(1)(イ)は、予定利率引下げで発生した未積立債務の償却を問うている。再計算と償却は必ずひと続きで出る。
、剰余金
5,000.00 )
・予定利率を 2.0 パーセントから 1.5 パーセントへ引き下げる
・予定脱退率と年金受給権者の生存率 p=0.918 は動かさない
vp=1.0150.918=0.904433 なので a¨60=1−0.9044331=10.463918 である(引下げ前は 10)。
S57=6.596256→7.004776(+6.19 パーセント)、G57=2.651288→2.663229(+0.45 パーセント)。
EP=2.6632297.004776=2.630182 で +5.72 パーセント。分子の伸びが分母の伸びを大きく上回る。
V新=89,326.13+21,331.12−2.630182×5,151.41=97,108.11 である。積立金は 97,775.95 のままなので剰余金は
97,775.95−97,108.11=667.84
まで減る。減少額 4,332.16 は責任準備金の増加額と一致する。