財政再計算の枠組みとは|定義・公式とアクチュアリー試験の関連問題 | acpass年金数理・用語・財政再計算と制度変更
ひとことで言うと
計算基礎率や制度の中身を見直したあと、標準保険料・責任準備金・特別保険料を全部いっぺんに計算し直す作業。動くのは負債の側だけで、いま持っている積立金は1円も動かない。
再計算の入力は積立金と新しい前提、出力は標準保険料・責任準備金・未積立債務の3つ。積立金だけが再計算をまたいで動かないので、未積立債務は必ず新しい責任準備金から元の積立金を引いて出す。
数式で表すと
P新=G新S新,U新=V新−F 財政再計算とは、ある時点で前提を引き直し、そのうえで保険料と責任準備金を計算し直すことである。出てくる答は次の3つに決まっている。
(1) 新しい標準保険料 P新=G新S新
試験に出る性質
出力は標準保険料・責任準備金・未積立債務の3つに決まっている
P新=S新/G新 を出し、V新
例で見る
<計算の前提>
・B1〜B4・B6 と同じトイモデル(加入57歳・定年60歳・予定利率 2.0 パーセント・毎年1,000人加入の定常状態)
・責任準備金 V0=92,775.95、標準保険料 EP=2.487944
つまずきポイント
- 再計算で積立金が動くと考えない。動くのは責任準備金と保険料であって、資産は前提を変えても増えない。
- 未積立債務を「新しい責任準備金 − 新しい積立金」と書かない。積立金に新旧の別は無い。
- 財政方式を確かめずに責任準備金の式を書かない。加入年齢方式は Sp+Sa−PGa、開放基金方式は Sp+SPSa
定着クイズ
Q1財政再計算を行った結果、責任準備金が 92,775.95 から 97,108.11 に増えた。再計算の直前の積立金が 97,775.95 であったとき、再計算後の剰余金に最も近いものはどれか。
Q2財政再計算によって動く量と動かない量の組合せとして、正しいものはどれか。
Q3開放基金方式の年金制度で、財政再計算にあたり加入年齢の前提だけを 45 歳から 40 歳に変更した。このとき責任準備金はどうなるか。
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定期的に計算基礎率と制度内容を見直し、標準保険料率・責任準備金・特別保険料率を計算し直す手続き。再計算前後で責任準備金の定義が変わる点が論点。
(2) 新しい責任準備金 V新
(3) その差から出る未積立債務 U新=V新−F または剰余金 M新=F−V新
再計算で書き換わるのは計算基礎率と制度内容、つまり将来のキャッシュフローの見積りだけである。既に積み上がっている資産は前提を変えても増えも減りもしない。だから未積立債務は必ず「新しい責任準備金から元のままの積立金を引いた額」として出る。
U09 の設問は、変更の種類がどれであっても何を不変に保つかを指定してくる。標準保険料を不変にするのか、責任準備金を不変にするのか、定常状態を保つのか、剰余金をゼロ以上に保つのか。この1行を読み落とすと立てる等式を間違える。
責任準備金の定義そのものが財政方式で違うので、同じ再計算をしても方式によって未積立債務が出たり出なかったりする。加入年齢方式の責任準備金は S−PG なので標準保険料が動けば必ず動く。一方、開放基金方式の責任準備金は過去期間対応分と年金受給権者分だけで決まるので、加入年齢の前提を変えても動かない。
を出し、
U新=V新−F を出す。2020年度問題4はこの3つを(1)(2)で6つの空欄に割り当てている。
積立金は再計算をまたいで動かない
再計算で書き換わるのは将来のキャッシュフローの見積りだけである。したがって未積立債務は必ず「新しい責任準備金 − 元の積立金」で出す。
開放基金方式では加入年齢を変えても責任準備金が動かない
開放基金方式の責任準備金は年金受給権者分と過去期間対応分だけで決まる。2020年度問題4(2)では、加入年齢を45歳から40歳に変えても責任準備金が 1,011l0 のまま動かず、未積立債務も特別保険料もゼロになった。
設問は「何を不変に保つか」を必ず指定してくる
標準保険料を不変(2018年度問題1(7)ほか)、責任準備金を不変(2022年度問題3(2)(エ))、定常状態を保つ(2019年度問題1(4)・2023年度問題1(7))、剰余金をゼロ以上(2018年度問題2(4)③)の4種類しかない。
将来加入者数の見込みを変えると開放型の保険料だけが動く
加入年齢方式の標準保険料は標準的な新規加入者1人で決まるので将来加入者数に依存しないが、開放基金方式・開放型総合保険料方式の保険料は Sf と Gf を通じて依存する。
・X 年度末の積立金は F0=97,775.95 で、剰余金が 5,000.00 ある
前提も制度も変えなければ P新=2.487944、V新=92,775.95 で、剰余金も 5,000.00 のままである。再計算そのものは数字を動かさない。
(2)予定利率を 2.0 パーセントから 1.5 パーセントへ引き下げる
P新=2.630182、V新=97,108.11 になる。積立金は 97,775.95 のままなので
M新=97,775.95−97,108.11=667.84
で、剰余金が 5,000.00 から 667.84 まで減る。減った 4,332.16 は責任準備金の増加額とちょうど同じである。
保険料は 5.72 パーセント上がり、剰余金は 87 パーセント消えた。この2つは同じ1回の再計算の別々の側面であって、片方だけを見て「余裕がある」と判断してはいけない。
で、再計算に対する感度がまったく違う。
「再計算した」というだけでは何も動かない。動かすのは計算基礎率か制度内容の変更である。