財政方式間の積立金水準の比較とは|定義・公式とアクチュアリー試験の関連問題 | acpass年金数理・定理・財政方式の体系
ひとことで言うと
積立金の水準は、保険料の水準とちょうど逆の順に並ぶ。賦課方式が0、完全積立方式が最大。「誤っているものを全て選べ」形式で10年に3回出ており、順序と各方式の積立金の中身の両方を問われる。
積立金は上から下へ大きくなり、保険料は上から下へ小さくなる。C = B - dF から、一方の順序が決まれば他方は自動的に決まる。
数式で表すと
F賦課<F退職時<F単位<F平準<F加入時<F完全 定常状態の積立金の大小関係は
F賦課<F退職時<F単位<F平準<F加入時<F完全
試験に出る性質
積立金の順序は 賦課 < 退職時 < 単位 < 平準 < 加入時 < 完全
保険料の順序とちょうど逆になる。理由は定常状態の恒等式 C=B−dF である。H29年度問題1(3)(A)は「加入時積立 > 平準積立 > 退職時年金現価積立 > 単位積立」と書いて誤りとされた——単位積立と退職時年金現価積立が入れ替えられている。2021年度問題1(2)・2023年度問題1(8)も同じ形式(各5点)。
退職時年金現価積立方式の積立金は定年到達年齢の者を除く
その人たちの年金現価はいま保険料として払い込まれるところなので、期初の積立金にはまだ入っていない。2025年度問題1(5)(イ)はこの記述を正しいものとして出題している。
加入時積立方式の積立金は加入年齢の者を除く
同じ理由で、当期の新規加入者の給付現価はまだ積立金に入っていない。2025年度問題1(5)(ア)は「除く」を落とした記述を誤りとしている。数値で確かめると、加入年齢の1,000人分を足すと積立金が6,596ぶん過大になる。
単位積立方式と平準積立方式の違いは在職者分の測り方
単位積立方式は「在職者の過去の加入期間に対応する給付現価」、平準積立方式は「在職者の過去の保険料の元利合計」である。前者は給付側から、後者は保険料側から測っている。H29年度問題1(3)(B)は平準積立方式の積立金を元利合計の形で書いた記述だが、和の範囲がずれており誤りとされた。式の形だけでなく添字の範囲まで読むこと。
例で見る
<計算の前提>
・加入年齢 57歳、定年年齢 60歳、予定利率 2.0 パーセント、毎年 1,000 人が加入する定常状態
・年間給付総額 B=8,536.59、d=0.0196078
・保険料総額は NEN038 の(1)で求めた値を使う
F=(B−C)/d
つまずきポイント
- 「除く」が付くのは退職時年金現価積立方式(xr 歳)と加入時積立方式(xe 歳)の2つ。単位積立方式や完全積立方式には付かない。
- 順序は定常状態の話である。定常でない制度に持ち込まない。
- 積立金の順序を覚えて保険料の順序を書くときに、反転を忘れて同じ順に書かない。
- 「誤っているものを全て選べ」形式では和の範囲(xe
定着クイズ
Q1定常状態における各財政方式の積立金の水準を小さい順に並べたものとして正しいものはどれか。
Q2退職時年金現価積立方式の定常状態における積立金として正しいものはどれか。
Q3Trowbridgeモデルの年金制度が定常状態にあるとき、開放基金方式の積立金と一致するものはどれか。
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同じ給付を賄う各方式の定常状態における積立金の大小関係。保険料水準とちょうど逆順に並ぶ。誤りを全て選ぶ形式で問われる。
である。保険料の順序(NEN038)とちょうど逆で、理由は C=B−dF の1行に尽きる。
順序だけでなく中身を問われる。本試験が繰り返し出しているのは次の対応である。
・賦課方式:0
・退職時年金現価積立方式:年金受給権者の給付現価(xr 歳の者を除く)
・単位積立方式:年金受給権者の給付現価+在職者の過去の加入期間に対応する給付現価
・平準積立方式:年金受給権者の給付現価+在職者の過去の保険料の元利合計
・加入時積立方式:年金受給権者の給付現価+在職者の給付現価(xe 歳の者を除く)
・完全積立方式:年金受給権者+在職者+将来加入見込者の給付現価
退職時年金現価積立方式は定年到達年齢の者を除く。その人たちの年金現価は、まさにいま保険料として払い込まれるところなので、期初の積立金にはまだ入っていない。同じ理由で加入時積立方式は加入年齢の者を除く。この1語を落とすのが誤り選択肢の定番である。
加入時積立方式と単位積立方式の積立金の差は、在職者の将来の加入期間に対応する給付現価である。
F加入時−F単位=∑x=xe+1xr−1lx(T)⋅xr−xexr−x⋅DxDxra¨xr
どちらも年金受給権者分は共通なので、在職者分だけが残るからである。
Sp・Sa・Sf を与えて F加入時/F退職時 を式で答えさせる形式がある。定義に戻って分子・分母を組み立てるだけだが、どこに利率が付き、どこに現価率が付くかで選択肢が10個並ぶので、時期の対応を丁寧に追う。
差をとると在職者の将来期間分が現れる
F加入時−F単位 は在職者の将来の加入期間に対応する給付現価になる。年金受給権者分が共通で消えるためで、H29年度問題1(3)(C)はこの差の算式を正しいものとして出している。
定常状態では開放基金方式の積立金は単位積立方式の積立金と一致する
開放基金方式の責任準備金は Sp+SPSa に潰れ(NEN034)、これは単位積立方式の積立金そのものだからである。H29年度問題1(3)(D)はこの記述を正しいものとして出している。「別の方式なら積立金も違う」と決めつけない。
で積立金に直すと次のようになる。
・退職時年金現価積立方式 F=(8,536.59−7,000.00)/0.0196078=78,365.85
・単位積立方式 F=(8,536.59−6,729.06)/0.0196078=92,183.74
・平準積立方式 F=(8,536.59−6,717.45)/0.0196078=92,775.95
・加入時積立方式 F=(8,536.59−6,596.26)/0.0196078=98,956.78
・完全積立方式 F=8,536.59/0.0196078=435,365.85
・退職時年金現価積立方式:60歳到達者700人を除く年金受給権者の給付現価は 10×700×1−0.9180.918=78,365.85。一致する
・単位積立方式:年金受給権者の給付現価 85,365.85 + 在職者の過去期間分 900×31×7.4758+800×32×8.5784=6,817.89。合計 92,183.74。一致する
・加入時積立方式:年金受給権者の給付現価 85,365.85 + 57歳を除く在職者の給付現価 900×7.4758+800×8.5784=13,590.92。合計 98,956.77。一致する
57歳(加入年齢)の1,000人を足すと過大になることを確かめてほしい。差は 6,596 で、加入時積立方式の保険料総額そのものである。「除く」の1語がこの差額である。
加入時積立方式と退職時年金現価積立方式の比は 98,956.78÷78,365.85=1.263 である。
からか
からか)が論点になる。式の形が合っていても添字で誤りになる。