財政方式間の保険料水準の比較とは|定義・公式とアクチュアリー試験の関連問題 | acpass年金数理・定理・財政方式の体系
ひとことで言うと
積立を早く進める方式ほど運用収益が働くので、毎年の保険料は安くなる。賦課方式がいちばん高く、完全積立方式が0。順序を丸暗記するのではなく、C = B - dF の1行から復元する。
単位積立方式の保険料は年齢とともに増え、途中で平準な標準保険料を追い越す。加入年齢方式のほうが低いので、先に追い越される。
数式で表すと
P賦課>P退職時>P単位>P平準>P加入時 同じ給付を約束する制度を6つの財政方式で運営したとき、定常状態の年間保険料総額の大小関係は
C賦課>C退職時>C単位>C平準>C加入時>C完全=0
試験に出る性質
保険料の順序は 賦課 > 退職時 > 単位 > 平準 > 加入時 > 完全
積立を早く進める方式ほど運用収益が働くので保険料は低い。2017年度問題2(2)②・問題4(1)⑤⑥はこの大小関係を定式化させる。順序を忘れたら C=B−dF から積立金の順序を反転させて復元できる。
単位積立方式の年齢別保険料は途中で平準な標準保険料を追い越す
UPx
例で見る
<計算の前提>
・加入年齢 57歳、定年年齢 60歳、予定利率 2.0 パーセント、毎年 1,000 人が加入する定常状態
・年間給付総額 B=8,536.59、d=0.0196078
(1)6つの方式の定常状態の保険料総額を並べる。
・賦課方式 8,536.59
つまずきポイント
- 「保険料が高い=制度の負担が重い」ではない。積立が進んでいないぶん運用収益を使えていないだけである。
- UPx は年齢の関数、EP・OANP
定着クイズ
Q1定常状態における各財政方式の保険料水準を高い順に並べたものとして正しいものはどれか。
Q2単位積立方式の年齢別保険料が、加入年齢方式の標準保険料と開放基金方式の標準保険料をそれぞれ上回る最小の年齢について正しいものはどれか。
Q3同じ制度を加入年齢方式で運営した場合と開放基金方式で運営した場合の比較として正しいものはどれか。
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同じ給付を賄う各方式の単年度保険料の大小関係。積立を早く進める方式ほど運用収益が効くため保険料は低くなる。「どの年齢で逆転するか」を問う設問が定番。
定常状態の収支式から C=B−dF が出る(NEN026)。B は方式によらず同じなので、積立金 F が大きい方式ほど保険料は小さい。積立金の順序(NEN039)を1つ覚えれば保険料の順序は自動的に出る。逆も同じである。
単位積立方式の保険料 UPx は年齢とともに増える。定年が近いほど割引期間が短く、残存割合も高いからである。一方、加入年齢方式の EP と開放基金方式の OANP は年齢によらず一定である。したがって
・若いうちは UPx<EP(単位積立方式のほうが安い)
・ある年齢を境に UPx>EP に逆転する
この逆転する最小の年齢を問う設問が定番である。EP<OANP なので、加入年齢方式を追い越す年齢のほうが、開放基金方式を追い越す年齢より若い。
保険料が高い方式ほど責任準備金は小さい(将来の保険料でまかなう部分が多いから)。したがって
・加入年齢方式:保険料が低い → 責任準備金が大きい → 未積立債務が大きい → 償却に時間がかかる
・開放基金方式:保険料が高い → 責任準備金が小さい → 未積立債務が小さい → 償却が早く終わる
標準保険料の高低と、拠出総額の高低は別の話である。開放基金方式は標準保険料こそ高いが、特別保険料の総額は小さくなる。
は年齢とともに増えるので、ある年齢で
・
を上回る。H29年度問題4(2)は加入20歳・定年60歳・脱退率3.0パーセントで、加入年齢方式を上回る最小年齢が37歳、開放基金方式を上回る最小年齢が39歳であることを問う。2024年度問題3(1)(ウ)も同型(4点)。
加入年齢方式を追い越す年齢のほうが若い
EP<OANP なので、低いほうの線に先に到達する。逆転年齢を2つ求めさせる設問では、大小関係が答の整合性チェックになる。
標準保険料が高い方式ほど未積立債務は小さい
保険料でまかなう範囲が広いぶん責任準備金が小さくなるため。2025年度問題1(6)は、開放基金方式のほうが償却完了までの年数が4年短く、特別保険料の総額が8,644百万円小さくなることを問う(5点)。標準保険料の高低と拠出総額の高低は逆向きになりうる。
比較は同じ給付・同じ計算基礎率のもとでのみ成り立つ
順序は「同じ制度を別の方式で運営したら」という仮定の下の話である。給付水準や予定利率が違う制度どうしを並べても意味がない。財政方式の変更(NEN040)を扱う設問では、変更前後で給付が変わらないことを確認してから順序を使う。
・退職時年金現価積立方式 700×10=7,000.00 ・単位積立方式 6,729.06
・平準積立方式 2,700×2.4879=6,717.45
・加入時積立方式 1,000×6.5963=6,596.26
順序どおりに並んでいる。それぞれ F=(B−C)/d で積立金に直すと、順序がちょうど逆になる。
(2)年齢別の逆転を見る。UP57=2.19875、UP58=2.49192、UP59=2.85948 に対し EP=2.4879、OANP=2.4922 なので、
・UPx>EP となる最小年齢は58歳
・UPx>OANP となる最小年齢は59歳
在職3年しかないので差は1歳だが、H29年度問題4(2)のように加入20歳・定年60歳・脱退率3.0パーセントの制度では37歳と39歳になる。
(3)未積立債務の比較。2025年度問題1(6)の諸数値(Sp=9,500、SPSa=16,400、SFSa=25,400、Sf=15,200、Ga=108,000、Gf=95,000、F=24,000)では
・加入年齢方式:EP=15,200/95,000=0.16、V=51,300−0.16×108,000=34,020、U=10,020
・開放基金方式:OANP=40,600/203,000=0.20、V=9,500+16,400=25,900、U=1,900
標準保険料率は開放基金方式のほうが高いのに、未積立債務は5分の1以下である。
は定数。同じ土俵で比べるときは年齢を指定する。
逆転する「最小の年齢」を答えるので、不等式を解いた実数の端点をそのまま書かず切り上げる。標準保険料率の大小と、特別保険料まで含めた拠出総額の大小は一致しないことがある。