賦課方式とは|定義・公式とアクチュアリー試験の関連問題 | acpass年金数理・公式・財政方式の体系
ひとことで言うと
その年に払う年金を、その年の保険料でそのまま賄う方式。お金を貯めておかないので積立金はゼロ、そのぶん保険料は6方式のなかで最も高くなる。財政方式の目盛りの左端であり、他の方式はここからどれだけ前倒しで積むかで並ぶ。
保険料と給付が同額で通り抜けるので積立金は常にゼロ。運用収益を一切使えないぶん、保険料は6方式のなかで最も高くなる。
数式で表すと
P賦課=当年度給与総額(または人数)当年度給付額,F=0 賦課方式は、その年度の給付額をその年度の保険料でそのまま賄う方式である。積立金を持たないので、定常状態では
C=B,F=0
が成り立つ。定常状態の極限方程式 C+dF=B に F=0
試験に出る性質
定常状態の賦課方式では C = B かつ F = 0
極限方程式 C+dF=B の左端に位置する。2016年度問題1(3)は、賦課方式で定常状態にある制度を出発点として保険料を何倍にすれば完全積立方式に届くかを問うた(5点)。
保険料は6方式で最も高く、積立金は最も小さい
積立金がゼロなので運用収益 dF をまったく使えないためである。順序の全体像は NEN038・NEN039 を参照。
賦課方式と完全積立方式の距離はちょうど B / d
F賦課=0
例で見る
<計算の前提>
・B1・B2 と同じトイモデル(加入57歳・定年60歳・予定利率 2.0 パーセント・毎年1,000人加入の定常状態)
・年間給付総額 B=8,536.59、d=0.0196078
(1)定常状態の保険料と積立金
賦課方式なので定義から
PC=B=8,536.59,F=0
つまずきポイント
- 「保険料が最も高い=制度全体の負担が最も重い」ではない。積立金が生む利息を使えていないだけで、給付総額は方式によらない。
- x=1/(1−vt) を解いた t は実数なので、必ず切り上げて整数にする。切り上げを忘れると本試験の選択肢に無い値になる。
- 1−vt
定着クイズ
Q1定常状態にある Trowbridge モデルの年金制度を賦課方式で運営している。年間給付総額が 8,536.59、d=0.0196078 のとき、保険料総額と積立金の組合せとして正しいものはどれか。
Q2賦課方式で定常状態にある制度が、保険料を x 倍にして t 年払い込むと完全積立方式の積立金に到達した。x を表す式として正しいものはどれか。
Q3賦課方式について述べた次の記述のうち、「誤っている」ものはどれか。
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その年の給付をその年の保険料で賄い、積立金を持たない方式。積立金がゼロなので保険料水準は最も高くなるが、制度発足時の負担は最も軽い。
を代入したものと言ってもよい。
積立金がゼロだと運用収益をまったく使えない。他の方式は積立金 F が生む利息 dF のぶんだけ保険料を減らせるので、賦課方式の保険料 B が上限になる。逆に言えば、賦課方式は制度発足時に一切の追加拠出が要らないという長所を持つ。
賦課方式(F=0)と完全積立方式(F=B/d)は目盛りの両端である。両者の差はちょうど B/d で、これが「積立てをまったくしていない状態から、全部積み終わった状態までの距離」になる。
本試験は「賦課方式の保険料を x 倍にして t 年払い込むと完全積立方式の積立金に届くか」を繰り返し問う。n 年度末に Fn=0、以後の各年度で
Ft+1=(Ft+xPC−B)(1+i)
vtFn+t=Fn+1−v1−vt(xPC−B)
と閉じる。Fn=0・PC=B・Fn+t=B/d を代入すると倍率が
x=1−vt1
という形にまとまる。この1本を作れるかどうかが設問の分かれ目である。
、
F完全=B/d だからである。「積立てが全く進んでいない状態」から「全部積み終わった状態」までの距離を1つの量で測れる。
保険料を x 倍にして t 年で完全積立に届く条件は x = 1/(1-v^t)
漸化式 Ft+1=(Ft+xPC−B)(1+i) を t 回まとめると vtFn+t=Fn+1−v1−vt(xPC−B) になる。ここに Fn=0、PC=B、Fn+t=B/d を代入すると x の式が残る。2016年度問題1(3)はこの形を「x≤2 の範囲で最小の整数 t」として問うている。
制度発足時の負担は最も軽い
積み立てておくべき額がゼロなので、発足時に追加拠出が要らない。保険料の高さと発足時負担の軽さは別の話であり、どちらか一方だけを見て「賦課方式は不利」と決めない。
である。極限方程式 C+dF=B でも 8,536.59+0.0196078×0=8,536.59 で一致する。
(2)保険料を2倍にして完全積立方式に届くまでの年数
完全積立方式の積立金は B/d=435,365.85 である。保険料を2倍にすると毎年 8,536.59 ずつ余るので、
x=1−vt1=2 ⟺ vt=21 ⟺ t>log1.02log2=35.00
したがって36年かかる。漸化式 Ft+1=(Ft+2B−B)(1+i) を実際に36回回すと F36=440,269>435,365.85、35回では 431,206<435,365.85 となり、切り上げが必要なことが数値でも確認できる。
同じ形の設問が予定利率 3.0 パーセントで出ている。t>log2/log1.03=23.44 より最小の整数は24で、公式解の(I)と一致する。予定利率が高いほど早く積み上がる(利息が効くため)ことが、35→24 の差に現れている。
の
は予定利率から作る。運用利回りが与えられていても、積立目標が予定利率ベースなら
は予定利率のものを使う。
積立金がゼロであることと、未積立債務がゼロであることは別である。賦課方式の未積立債務は責任準備金そのものになる。