モデリング・公式
ひとことで言うと
AR(1)の予測は『平均回帰』が本質です。k 期先の点予測は Y^t+k=ϕk(Yt−μ)+μ で、ϕk が 0 に向かうため遠い将来ほど無条件平均 μ に吸い寄せられます。同時に予測誤差の分散は増えていき、最終的に無条件分散 γ0 に収束する——遠い未来ほど『平均に近いが不確実』になるのです。
AR(1) ϕ=0.8,μ=0,σ2=0.36、現在 Yt=2 の予測。点予測 Y^t+k=ϕkYt=1.6,1.28,… は平均 0 へ回帰(緑線)。予測誤差の帯(薄緑)は ±0.6→±1 と無条件分散 γ0=1 へ広がる。
数式で表すと
Y^t+k=ϕkYt, Var=σ21−ϕ21−ϕ2k
AR(1)の k 期先予測は ϕk 倍に減衰。予測誤差分散は徐々に増える。
AR(1) モデル Yt−μ=ϕ(Yt−1−μ)+εt(∣ϕ∣<1 で定常、εt は分散 σ2 のホワイトノイズ)に基づく将来予測を考えます。最小平均二乗誤差の意味で最適な点予測は条件付き期待値で、AR(1) では
Y^t+k∣t=ϕk(Yt−μ)+μ
となります(μ=0 なら Y^t+k=ϕkYt)。漸化式を繰り返し代入すれば導けます:Y^t+1=μ+ϕ(Yt−μ)、Y^t+2=μ+ϕ2(Yt−μ)、…と ϕ が1回ずつ掛かっていくためです。∣ϕ∣<1 なので ϕk→0、したがって k→∞ で点予測は無条件平均 μ に収束します。これが『平均回帰』——遠い将来ほど予測は現在値の情報を忘れ、長期平均に吸い寄せられるという AR(1) 予測の本質です。
次に予測の不確実性です。k 期先の予測誤差分散は
Var(予測誤差)=σ21−ϕ21−ϕ2k
です。k=1 では σ2 ですが、k が増えるにつれて単調に増え、k→∞ で σ2/(1−ϕ2)=γ0 つまり無条件分散に収束します。直感的には、遠い未来の値については現在値の手がかりがほぼ効かなくなり、予測の不確実性が『何も知らないときの分散(無条件分散)』にまで膨らむということです。点予測は平均 μ へ、予測誤差分散は無条件分散 γ0 へ——どちらも『無条件の世界』に向かって収束するのが対になっています。
具体例:ϕ=0.8,μ=0,σ2=0.36 → γ0=0.36/(1−0.64)=1。現在 Yt=2。
点予測: k=1 で 1.6、k=2 で 1.28、k=5 で ≈0.655、k→∞ で 0(平均回帰)。
予測誤差分散: σk2=1−0.64k → k=1 で 0.36、k=2 で 0.5904、k→∞ で 1=γ0。試験に出る性質
k期先の点予測
Y^t+k∣t=ϕk(Yt−μ)+μ(μ=0 なら ϕkYt)。漸化式の繰り返し代入で ϕ が k 回掛かる。
平均回帰
∣ϕ∣<1 より ϕk→0。k→∞ で点予測は無条件平均 μ に収束。遠い将来ほど現在値を忘れる。
予測誤差分散
σ2(1−ϕ2k)/(1−ϕ2)。k=1 では σ2、k とともに単調増加。
無条件分散へ収束
k→∞ で σ2/(1−ϕ2)=γ0。不確実性が無条件分散に収束する。
二重の収束
点予測は平均 μ へ、予測誤差分散は γ0 へ。遠い未来は『平均に近いが最も不確実』。
例で見る
ϕ=0.8,μ=0,σ2=0.36 → γ0=1。現在 Yt=2。
点予測: k=1:1.6、k=2:1.28、k→∞:0(平均回帰)。
予測誤差分散: k=1:0.36、k=2:0.5904、k→∞:1=γ0。
つまずきポイント
- 点予測が現在値 Yt をいつまでも保つと思う(ϕk→0 で無条件平均 μ に回帰。長期予測は現在値の情報を忘れる)
- 予測誤差分散が無限に発散すると思う(定常 AR では γ0 に収束する。発散するのは単位根 ϕ=1 の非定常な場合)
- 1期先分散 σ2 をk期先でも使う(k期先は σ2(1−ϕ2k)/(1−ϕ2) で k とともに増える)
定着クイズ
AR(1) μ=0 の k 期先点予測は?
ϕ=0.8,μ=0,Yt=2 のとき k=2 期先の点予測は?
AR(1) で k→∞ のとき予測誤差分散は?