モデリング・用語
ひとことで言うと
自己相関 ρk はラグ k 離れた値どうしの相関ですが、モデル識別では ACF(自己相関)と PACF(偏自己相関)の2枚組で見ます。AR は ACF が指数減衰・PACF がラグ p で打ち切り、MA は逆に ACF がラグ q で打ち切り・PACF が指数減衰。この『減衰か打ち切りか』のパターンで次数 p,q を読み取るのが実用スキルです。
AR(1) ϕ=0.7 の ACF(緑)は ρk=0.7k で指数減衰し尾を引く。MA(1) θ=0.7 の ACF(赤)は ρ1≈0.470 でラグ2以降ぴたり 0。『急に切れたらMA・尾を引けばAR』。
数式で表すと
ρk=γk/γ0
同一系列のラグ k での相関 ρk。AR は指数減衰、MA(1) はラグ2で0。
自己相関 ρk=γk/γ0 は、同じ系列のラグ k 離れた2値の相関でした。これを実務で使うとき主役になるのが、ρk をラグごとに並べた ACF(自己相関関数)と PACF(偏自己相関関数)という2つの道具です。両者を読み比べて AR か MA か、そして次数 p,q がいくつかを当てる——これがモデル識別の中心スキルです。
PACF とは、ラグ k の自己相関から『途中のラグ 1,…,k−1 を通じた間接的な相関』を取り除いた、Yt と Yt−k の直接の結びつきだけを測ったものです。たとえば AR(1) では Yt と Yt−2 は Yt−1 を経由して相関しますが、Yt−1 を固定して間接経路を消すと直接の相関は 0 になります。だから AR(1) の PACF はラグ1だけが大きく、ラグ2以降は 0 にぴたりと切れます。一般に AR(p) は ACF が指数(または減衰振動)で尾を引き、PACF がラグ p で打ち切りになります。MA(q) はちょうど立場が逆で、ACF がラグ q で打ち切り、PACF が指数で尾を引きます。つまり『AR:ACF減衰/PACF打ち切り、MA:ACF打ち切り/PACF減衰』で、打ち切りが起きるラグの位置がそのまま次数を教えてくれます。
数値例で確かめます。AR(1) で ϕ=0.7 の ACF は ρk=0.7k なので k=1 で 0.7、k=2 で 0.49、k=3 で 0.343 と指数減衰し尾を引きます。MA(1) で θ=0.7 の ACF は、γ0=(1+θ2)σ2=1.49σ2、γ1=θσ2=0.7σ2 なので ρ1=0.7/1.49≈0.470、そして ρk=0 (k≥2) とラグ2でぴたり 0 に切れます。『ACF が急に 0 に切れたら MA、いつまでも尾を引けば AR』という識別法が一目で分かります。実データではノイズで完全に 0 にはならないので、±2/n の信頼帯を超えるかどうかで有意なラグを判定し、p,q を推定します。試験に出る性質
ACFとPACFの2枚組
ACF は ρk をラグごとに並べたもの、PACF は間接経路を除いた Yt,Yt−k の直接相関。両方をセットで読む。
AR($p$)のパターン
ACF は指数で尾を引く、PACF はラグ p で打ち切り。打ち切り位置が次数 p。
MA($q$)のパターン
ACF はラグ q で打ち切り、PACF は指数で尾を引く。ARとちょうど立場が逆。
識別の合言葉
『急に 0 に切れたら MA・いつまでも尾を引けば AR』。打ち切りが起きるラグがそのまま次数を示す。
有意性の判定
実データは ±2/n の信頼帯を超えるラグを『有意』とみて p,q を推定。
例で見る
AR(1) ϕ=0.7: ACF は ρk=0.7k(0.7,0.49,0.343…指数減衰、尾を引く)。
MA(1) θ=0.7: ρ1=0.7/1.49≈0.470、ρk=0 (k≥2)(ラグ2でぴたり0に切れる)。
ACF が急に切れたらMA、尾を引けばARと識別できる。
つまずきポイント
- ACFだけ見てモデルを決める(AR/MAの識別は ACF と PACF の両方が必須)
- ARとMAのACF/PACFパターンを逆に覚える(AR:ACF減衰・PACF打ち切り/MA:ACF打ち切り・PACF減衰)
- 実データのACFが完全に 0 になると期待する(ノイズで揺れる。±2/n の信頼帯を超えるかで判定)
定着クイズ
AR(p) のACF・PACFのパターンは?
MA(1) θ=0.7 の ρ1 と ρ2 は?
ACFが『急に0に切れた』ら?