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二項モデル(多期間・アメリカン)

知識マップ

投資理論定理

ひとことで言うと

多期間では満期から現在へ向けて後向き帰納を繰り返す。アメリカン・オプションは各ノードで「今すぐ行使する価値」と「継続して保持する価値」を比較し大きい方を選ぶ。無配当株のアメリカン・コールは早期行使しない(欧州コールと同価値)。

2期間二項ツリー。t=2の満期ペイオフから出発し、各ノードでリスク中立確率qを使って後向き帰納でt=0の現在価値を求める。S₀t=0uS₀t=1dS₀t=1u²S₀t=2udS₀t=2d²S₀t=2← 後向き帰納(満期から現在へ計算)

2 期間二項ツリー。後向き帰納では t=2t=2 の満期ペイオフ → t=1t=1 の各ノード → t=0t=0 の順で計算。アメリカン・オプションは各ノードで早期行使価値と継続価値を比較。

数式で表すと

Vn=max(早期行使価値,  qVn+1,u+(1q)Vn+1,d1+rf)V_n = \max(\text{早期行使価値},\; \frac{q V_{n+1,u} + (1-q) V_{n+1,d}}{1+r_f})

多期間はバックワード帰納法で計算。アメリカン・オプションは各ノードで早期行使価値と継続価値を比較。無配当株のアメリカン・コールは早期行使しない。

多期間二項モデルの後向き帰納: ① t=nt=n(満期)の各ノードでペイオフを計算。 ② t=n1t=n-1 の各ノードで: V=qVu+(1q)Vd1+rfV = \frac{q V_{u} + (1-q) V_{d}}{1+r_f} ③ アメリカン・オプションは早期行使価値と比較: Vamerican=max(早期行使価値,  V)V_{\text{american}} = \max(\text{早期行使価値},\; V) ④ ②〜③を t=0t=0 まで繰り返す。 無配当株のアメリカン・コールの早期行使: 早期行使すれば SKS - K を得るが、その前に株を持ち続ける時間価値と KK の利子節約分を失う(KK をまだ払わなくてよい)。これらを考慮すると早期行使は常に得でなく、欧州コール価格 == アメリカン・コール価格(無配当株の場合)。

試験に出る性質

アメリカン・プットは早期行使が有利なケースがある

深い ITM プットは早期行使して KSK - S を確定し、その現金を無リスク運用した方が有利なケースがある。アメリカン・プット \geq 欧州プット(等号でない可能性)。

配当がある場合のアメリカン・コール

配当落ち直前に株価が下落するため、配当を得るために早期行使が有利になるケースがある。配当あり株のアメリカン・コール \geq 欧州コール(等号でない可能性)。

後向き帰納のノード数は指数的に増加

再結合ツリー(ud=duud = du のとき)なら nn 期間でノード数 (n+1)(n+2)/2(n+1)(n+2)/2。再結合しないと 2n2^n で爆発。実務では数百期の再結合ツリーを使う。

例で見る

2 期間、q=0.6q = 0.6rf=5%r_f = 5\%(1 期間)。満期ノード:Cuu=21C_{uu} = 21Cud=5C_{ud} = 5Cdd=0C_{dd} = 0t=1t=1 上昇ノード:(0.6×21+0.4×5)/1.05=(12.6+2)/1.0513.9(0.6 \times 21 + 0.4 \times 5)/1.05 = (12.6+2)/1.05 \approx 13.9 t=1t=1 下落ノード:(0.6×5+0.4×0)/1.052.86(0.6 \times 5 + 0.4 \times 0)/1.05 \approx 2.86 t=0t=0(0.6×13.9+0.4×2.86)/1.059.02(0.6 \times 13.9 + 0.4 \times 2.86)/1.05 \approx 9.02

つまずきポイント

  • 後向き帰納の方向を逆にしない。「t=0t=0 から計算して満期に向かう」のではなく「満期から計算して t=0t=0 に向かう」。
  • 「無配当株のアメリカン・コールは早期行使しない」は重要な命題。プットは逆(早期行使が最適なケースあり)。

定着クイズ

多期間二項モデルでオプション価格を求める手順として正しいものはどれか。

無配当株に対するアメリカン・コールについて正しいものはどれか。

アメリカン・プットで早期行使が有利になりうるケースとして最も適切なものはどれか。

関連:#R033#R035

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