投資理論・定理
ひとことで言うと
株価が 1 期間で uS(上昇)か dS(下落)の 2 値しか取らないシンプルなモデル。リスク中立確率 q=[(1+rf)−d]/(u−d) を使えば、実際の上昇確率を知らずにオプション価格が計算できる。
2 期間二項ツリー(1 期間の拡張)。各ノードからリスク中立確率 q(上昇)・1−q(下落)で分岐。満期ペイオフから後向き帰納で現在価値を求める。
数式で表すと
q=u−d(1+rf)−d,C0=1+rfqCu+(1−q)Cd
1期間で株価が uS(上昇)か dS(下落)になるモデル。リスク中立確率 q = [(1+rₓ)−d]/(u−d)。C₀ = [qCu+(1−q)Cd]/(1+rₓ)。
1 期間二項モデルの設定:
・現在株価 S0、1 期後に uS0(上昇倍率 u)または dS0(下落倍率 d)
・無リスク利子率 rf(1 期間)
無裁定から導くリスク中立確率:
q=u−d(1+rf)−d(d<1+rf<u が必要)
オプション価格:
C0=1+rfqCu+(1−q)Cd
ここで Cu・Cd は上昇・下落時のオプションペイオフ。「将来ペイオフをリスク中立確率で期待値を取り、無リスク利子率で割り引く」(R014 の応用)。試験に出る性質
デルタヘッジによる複製
Δ=(Cu−Cd)/((u−d)S0) の株式を保有するポートフォリオで、オプションを複製(ヘッジ)できる。このデルタヘッジポートフォリオは無リスクになり、リスク中立価格付けと等価な答えを出す。
$d < 1+r_f < u$ の必要性
この条件が崩れると裁定機会が生じる。1+rf≤d なら株より安全資産が常に有利、1+rf≥u なら安全資産より株が常に有利、どちらも裁定可能。
二項モデルは B-S 式の離散近似
期間を細かく刻むほど(n→∞)二項モデルの株価分布が対数正規分布に収束し、オプション価格はブラック・ショールズ式(R036)に一致する。
例で見る
S0=100、u=1.1、d=0.9、rf=5%(1 期間)、行使価格 K=100 のコール:
q=(1.05−0.9)/(1.1−0.9)=0.75
Cu=max(110−100,0)=10、Cd=0
C0=(0.75×10+0.25×0)/1.05≈7.14
つまずきポイント
- u・d は「倍率」(u=1.1 で上昇 10%、d=0.9 で下落 10%)。収益率(10%・−10%)をそのまま代入しない。
- リスク中立確率 q は実際の上昇確率ではない。q の計算に実際の上昇確率は一切不要(rf・u・d だけで決まる)。
定着クイズ
S0=100、u=1.2、d=0.8、rf=4%(1 期間)のとき、リスク中立確率 qu はいくらか。
上記(qu=0.6、qd=0.4)で、行使価格 K=100 のコールオプション(Su=120、Sd=80)の現在価格はいくらか(小数第 2 位まで)。
1 期間二項モデルでオプション価格を計算するために必要な情報として正しい組み合わせはどれか。