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会計・用語・負債・純資産・企業結合
将来お金を払うかもしれない、という状態には濃淡がある。ほぼ確実に払うことになり金額も見当がつくなら、負債として貸借対照表に載せる(引当金)。払うかどうかがまだ分からないなら、本体には載せず注記で知らせる(偶発債務)。まず起こらないなら何も書かない。偶発債務の論点は、この3段階のどこに置くかの線引きに尽きる。
発生の可能性が高く金額も見積もれるなら引当金として負債計上、どちらかが欠けるなら偶発債務として注記、可能性が極めて低ければ開示不要。手形の割引・裏書だけは負債計上と注記が同時に起こる。
決算日現在は現実の債務ではないが、将来一定の条件が成立したときに債務となる可能性のあるもの。債務の保証(保証債務・保証予約)、係争事件にかかる賠償義務、手形や電子記録債権を割り引いた・裏書譲渡したことによる遡求義務などが該当する。企業会計原則注解1-3 は、重要な偶発債務を貸借対照表に注記することを求める。発生の可能性が高く、かつ金額を合理的に見積もることができるときは引当金の計上4要件を満たすので、注記ではなく負債として計上する。手形の割引・裏書に伴う遡求義務については、金融商品会計基準により保証債務を時価相当額で負債に計上したうえで、割引手形・裏書手形の残高そのものを偶発債務として注記する。
1. 偶発債務とは
決算日現在は現実の債務ではないが、将来一定の条件が成立すると債務になる可能性のあるものをいう。代表例は次の3つである。
・債務の保証(保証債務、保証予約、経営指導念書などを含む) ・係争事件にかかる賠償義務 ・手形や電子記録債権の割引・裏書譲渡による遡求義務
いずれも決算日には支払義務が確定していない。確定していないから負債の定義を満たさず、貸借対照表の本体には計上しない。
2. 引当金との線引き
同じ「将来の支出」でも、企業会計原則注解18の計上4要件をすべて満たすものは引当金として負債に計上する。
(1) 将来の特定の費用または損失であること (2) その発生が当期以前の事象に起因すること (3) 発生の可能性が高いこと (4) 金額を合理的に見積もることができること
偶発債務と引当金を分けるのは、実質的に(3)と(4)である。発生の可能性が高く金額も見積もれるなら引当金、そうでなければ偶発債務として注記にとどめる。したがって、同じ債務保証でも、保証先の財政状態が悪化して代位弁済が見込まれる状態になれば、注記から債務保証損失引当金へ移る。
3. 注記による開示
企業会計原則注解1-3 は、重要な偶発債務を貸借対照表に注記することを求める。重要性が乏しいものや、発生の可能性が極めて低いものは注記も要しない。注記で開示するのは金額そのものではなく、事象の内容と、支出が生じる可能性のある金額である。
4. 手形の割引・裏書に伴う保証債務
手形や電子記録債権を割り引く(譲渡する)と、債権は帳簿から消えるが、振出人が支払わなければ譲渡人が支払う義務(遡求義務)が残る。金融商品会計基準では、この遡求義務を保証債務として時価相当額で負債に計上し、同額を保証債務費用として処理する。そのうえで、割引手形・裏書手形の残高そのものは偶発債務として注記する。
つまりこの論点だけは、負債計上と注記の両方が同時に起こる。「偶発債務だから注記だけ」と機械的に判断すると誤る。
5. 国際的な取扱い
国際財務報告基準(IAS第37号)では、経済的便益の流出の可能性が高くないもの、または金額を十分な信頼性をもって測定できないものを偶発負債と呼び、認識せず注記する。日本基準の偶発債務とほぼ同じ考え方だが、IAS第37号は「可能性が高い」を50パーセント超と説明する点で、日本基準より閾値の位置が明示されている。
偶発債務は現実の債務ではないので貸借対照表の本体には計上せず、重要なものを注記する
企業会計原則注解1-3 が根拠。開示するのは事象の内容と、支出が生じる可能性のある金額である。重要性が乏しいもの、発生の可能性が極めて低いものは注記も要しない。
引当金と偶発債務の分岐は「発生の可能性が高いか」と「金額を合理的に見積もれるか」の2点
注解18の計上4要件のうち、実質的に効いているのはこの2つ。両方を満たせば引当金として負債計上、どちらかが欠ければ偶発債務として注記になる。
同じ事象でも状況が変われば注記から負債計上へ移る
債務保証は、保証先の財政状態が悪化して代位弁済が見込まれるようになった時点で債務保証損失引当金へ振り替える。偶発債務か引当金かは事象の種類ではなく決算日現在の状況で決まる。
手形や電子記録債権の割引・裏書では、保証債務を時価で負債に計上したうえで残高を注記する
金融商品会計基準による。2025年度問題4(4)は、電子記録債権の一部を割り引いたときの遡求義務の時価相当額を、債権金額に対する割合から求めさせた。負債計上と注記が同時に起こる唯一の型である。
偶発債務には偶発資産の対概念があるが、偶発資産は原則として計上も注記もしない
保守主義の考え方から、損失側は開示し利益側は開示しないという非対称がある。国際財務報告基準(IAS第37号)でも同じ扱いである。
例1:債務の保証
得意先の銀行借入 30,000千円について保証している。決算日現在、得意先の業績は良好で代位弁済の見込みはない。
・引当金は計上しない(発生の可能性が高いとはいえない)
・偶発債務として、保証の内容と 30,000千円を注記する
翌期に得意先の財政状態が著しく悪化し、20,000千円の代位弁済が見込まれるようになった。この時点で計上4要件を満たすので、20,000千円を債務保証損失引当金として負債に計上する。注記だけの状態から負債計上へ移る。
例2:手形の割引に伴う保証債務
額面 5,000千円の受取手形を銀行で割り引き、割引料 100千円を差し引かれて 4,900千円を受け取った。遡求義務の時価相当額を額面の1パーセントと見積もった。
・現金及び預金 4,900/受取手形 5,000
・手形売却損 100
・保証債務費用 50/保証債務 50
保証債務 50千円は負債として本体に計上する。そのうえで、割引手形の残高 5,000千円を偶発債務として注記する。手形が無事決済されれば保証債務 50千円を取り崩し、保証債務取崩益とする。
例3:係争事件
損害賠償を求める訴訟を提起されている。請求額は 8,000千円だが、弁護士の見解では敗訴の可能性は低い。
・引当金は計上しない
・偶発債務として、訴訟の内容と請求額を注記する
敗訴の可能性が高く、賠償額が 6,000千円と合理的に見積もれる状態になれば、6,000千円を訴訟損失引当金として計上する。
将来の支出について、引当金として負債に計上せず偶発債務として注記にとどめるのはどの場合か。
受取手形を銀行で割り引き、遡求義務が残る場合の会計処理として正しいものはどれか。
得意先の銀行借入を保証していたが、当期末に得意先の財政状態が著しく悪化し代位弁済が見込まれ、その金額も合理的に見積もれるようになった。当期末の処理として正しいものはどれか。
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