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損保数理・定理・保険料算出原理・効用理論
契約者はリスクを保険会社に移転することで安心(効用の向上)を得られるが、そのために払ってもよい保険料には限度がある。効用理論は、契約者側・保険者側それぞれの効用の均衡条件から「支払ってよい保険料の上限」「引き受け可能な保険料の下限」を数式で導く枠組み。
指数効用関数のもとで、確実に保険料Pを支払った後の富w-Pの効用u(w-P)(曲線上の点)と、保険に入らずリスクXを保有した場合の期待効用E[u(w-X)](曲線より下の点)が等しくなる条件から、支払ってよい保険料の上限Pが定まる(横軸・縦軸の目盛りは概念を示す模式的なもの)。
富 を持つ契約者が保険料 を払ってクレーム をすべて保険会社に移転する場合、契約者にとって保険に入る前後で期待効用が悪化しない条件は
指数効用下の保険料上限は
指数効用
(2016年度問題2)を参考にした例。指数効用 ()のもとで、クレーム総額のモーメント母関数(MGF)が
指数効用 ()のもとで、クレーム総額XのモーメントMGFが であるとき、契約者が支払ってよい保険料の上限Pに最も近いものはどれか。
指数効用のもとでの保険料上限 は、契約者の初期財産Wにどう依存するか。
リスク回避度hを大きくすると(よりリスクを嫌う契約者ほど)、契約者が支払ってよい保険料の上限Pはどうなるか。
契約者・保険者の効用関数を用いて、保険取引が成立する保険料の範囲を導く枠組み。契約者が支払ってよい保険料の上限、保険者が引き受け可能な保険料の下限を、効用の期待値の均衡条件から定める。
を満たす が「契約者が支払ってよい保険料の上限」になる(これより高い保険料では加入しない)。効用関数が指数型 (:絶対的リスク回避度)のときは、モーメント母関数 を用いて
という閉じた形になる(指数効用はCARA性質=富 に依存しないことが特徴)。同様に保険者側の効用条件から「引き受け可能な保険料の下限」も定義でき、上限と下限の間に取引が成立する保険料帯域ができる。べき効用など他の効用関数を使う場合は、対数の形にはならず個別に を解く必要がある。
指数効用以外では保険料上限を直接方程式から解く必要がある
べき効用など指数効用以外の効用関数では、閉じた対数の式にはならず、を直接解いて を求める必要がある。効用関数の形によって解き方が全く異なる(2021年度問題3)。
指数効用における保険料上限の 非依存性・ との単調性
指数効用のもとでの保険料上限は初期財産 に依存しない(CARA性質)が、リスク回避度 を大きくすると上限は高くなる(2025年度問題3)。
保険者側の指数効用条件からも保険料の下限が定まる
保険者側の指数効用条件からも保険料の下限を計算できる。負の二項分布に従うクレームの場合、そのモーメント母関数を正しく代入する必要がある(2025年度問題3)。
一律保険料での加入者利益総額の最大化
効用理論で定まる保険料の上限・下限の範囲内で、一律保険料 のもとで加入者数 という利益総額を最大化する を求める問題も出題される(2021年度問題3)。
となる。h(リスク回避度)が大きいほど、この上限は高くなる——リスクをより嫌う契約者ほど、リスクを移転するために高い保険料を払ってもよいと考える、という直感に対応する。