多重脱退残存表とは|定義・公式とアクチュアリー試験の関連問題 | acpass年金数理・用語・定常人口と人員構成
ひとことで言うと
死亡・中途退職・障害のように抜ける理由が複数あるとき、「その理由しかなかったら」の脱退率と「全部同時に効いている」脱退率は別の数になる。両者を行き来する換算が論点になる。
単独脱退率の合計から、2原因が重なるぶんを引き、3原因が重なるぶんを足し戻すと多重脱退率の合計になる。包除の形になるので、係数の符号は交互に入れ替わる。
数式で表すと
lx+1(τ)=lx(τ)−∑jdx(j),tpx(τ)=∏jtpx′(j) 多重脱退残存表は、脱退の原因が複数ある集団の残存数を1本の表にしたものである。原因 j による x 歳の脱退者数を dx(j) とすると
lx+1(τ)=lx(τ)−j∑dx(j)
試験に出る性質
多重脱退率は必ず単独脱退率より小さい
他の原因で先に脱退した人はその原因では脱退しないため。qx(j)<qx(j)∗
例で見る
<計算の前提>
・脱退の原因は A・B・C の3つで、互いに独立、1年を通じて一様に発生する
・単独脱退率は q(A)∗=0.06
つまずきポイント
- qx(τ)=∑jqx(j)∗
定着クイズ
Q1脱退の原因 A・B が独立で、いずれも1年を通じて一様に発生するとする。単独脱退率 qx(A)∗ と多重脱退残存表の脱退率 qx(A) の大小関係として正しいものはどれか。
Q2脱退の原因 A・B・C が独立であるとき、成り立つ関係として正しいものはどれか。
Q33つの原因が独立で年内一様に発生するとき、∑jqx(j)∗−∑jqx(j) を表す式として正しいものはどれか。
この用語を扱う問題(0)
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死亡・定年前退職・障害など複数の脱退原因を同時に扱う残存表。二重・三重脱退表と、原因が1つしかない場合の単独脱退残存表との換算関係が論点になる。
で、(τ) は「全原因あわせて」を表す。原因 j による脱退率は qx(j)=dx(j)/lx(τ) である。
一方、その原因しか存在しない世界での脱退率を qx(j)∗ と書き、単独脱退率(絶対脱退率)と呼ぶ。アスタリスクの有無で意味がまったく違う。
px(τ)=j∏px(j)∗
が成り立つ。分解できるのは生存率の側だけで、脱退率は和にならない。
各原因が独立で年内に一様に発生するとき、二重脱退なら
qx(A)=qx(A)∗(1−21qx(B)∗)
qx(A)=qx(A)∗(1−21(qx(B)∗+qx(C)∗)+31qx(B)∗qx(C)∗)
j∑qx(j)∗−j∑qx(j)=(qx(A)∗qx(B)∗+qx(A)∗qx(C)∗+qx(B)∗qx(C)∗)−qx(A)∗qx(B)∗qx(C)∗
という左右対称な形になる。2020年度問題1(2)はこの差を選ばせている。
他の原因で先に抜けた人はその原因では脱退しないので、qx(j)<qx(j)∗ が必ず成り立つ。符号の向きだけでも選択肢が半分に絞れる。
が常に成り立つので、符号の向きだけで選択肢を半分に絞れる。2020年度問題1(2)は差の符号がプラスであることを前提に選択肢を10個並べている。
分解できるのは生存率で、脱退率は和にならない
独立なら px(τ)=∏jpx(j)∗ が成り立つ。一方 qx(τ)=∑jqx(j)∗ は成り立たない(重なりを二重に数えるため)。生存率で計算してから1を引くのが安全である。
単独脱退率の合計と多重脱退率の合計の差は包除の形になる
三重脱退で ∑q(j)∗−∑q(j)=(qA∗qB∗+qA∗qC∗+qB∗qC∗)−qA∗qB∗qC∗。2原因の積の和がプラス、3原因の積がマイナスで、符号が交互に入れ替わる。2020年度問題1(2)の正解がこの形。
換算式の係数 21・31 は年内一様の仮定から出る
他原因の脱退が年内に一様に起こるので、平均すると年の半分だけ危険にさらされる。この 21 が二重脱退の係数、3原因が同時に重なる項の 31 も同じ積分から出る。仮定を外すと係数は変わる。
二重脱退残存表から最終年齢を求める設問がある
2018年度問題1(1)は二重脱退残存表の最終年齢を聞いている。l(τ) が0になる年齢を求める問題で、各原因の脱退者数を年齢ごとに引いていけばよい。原因別の表を作らずに合計の表だけで解ける。
、
q(B)∗=0.04 、
q(C)∗=0.02
q(A)=0.06×(1−20.04+0.02+30.04×0.02)=0.06×0.970267=0.058216
q(B)=0.04×(1−20.06+0.02+30.06×0.02)=0.04×0.960400=0.038416
q(C)=0.02×(1−20.06+0.04+30.06×0.04)=0.02×0.950800=0.019016
(0.06+0.04+0.02)−(0.058216+0.038416+0.019016)=0.120000−0.115648=0.004352
(0.06×0.04+0.06×0.02+0.04×0.02)−0.06×0.04×0.02
=(0.0024+0.0012+0.0008)−0.000048=0.004400−0.000048=0.004352
(2) と (3) が一致する。換算式の係数 21 と 31 は近似ではなく、年内一様の仮定の下では厳密なので、両者はどんな数値でもぴったり合う。本試験は (3) の形を選択肢に並べてくるので、2原因の積の和がプラス、3原因の積がマイナスという符号の並びだけ覚えておけばよい。
と足してしまう。同じ人が複数の原因で数えられるので必ず過大になる。生存率の積
∏jpx(j)∗ から求めるのが正しい。
アスタリスクの有無を取り違える。アスタリスク付きが単独(絶対)脱退率、なしが多重脱退残存表の脱退率である。本試験は右肩にアスタリスクを置くので、記号を写すときに落とさない。換算式を近似式だと思って有効数字を落とす。21・31 は年内一様の仮定の下では厳密な係数である。丸めた q(j) どうしを引き算すると、差の桁が丸め誤差に埋もれる。