定常状態における収支相等とは|定義・公式とアクチュアリー試験の関連問題 | acpass年金数理・定理・定常人口と人員構成
ひとことで言うと
定常状態では毎年の出入りがつり合って積立金が1円も動かない。この「動かない」という条件を式にすると1本の方程式になり、保険料・給付・積立金のどれか1つを他の2つから逆算できる。
期初に保険料が入り給付が出て、残った額が1年運用されて元の水準に戻る。この「戻る」という条件が収支相等の式になり、払い方が期初か期末かで割引率が d と i に分かれる。
数式で表すと
保険料収入+iF=給付支出(積立金 F が不変のとき) 定常状態では毎年の保険料収入と給付支出・積立金の運用収益がつり合う。この関係から保険料水準や給付水準を逆算する。財政方式の比較の出発点になる。
定常状態では積立金 F が年度をまたいで変わらない。保険料 C と給付 B の払い方によって、この条件は2通りの式になる。
年1回期初払いの場合
(F+C−B)(1+i)=F
試験に出る性質
期初払いなら B−C=dF、期末払いなら B−C=iF
同じ B
例で見る
<計算の前提>
・B1〜B6 と同じトイモデル(加入57歳・定年60歳・予定利率 2.0 パーセント・期初払い)
・標準保険料総額 C=6,717.45、年間給付総額 B=8,536.59
(1)定常状態の積立金
d=1.020.02=0.0196078
つまずきポイント
- 期初払いなのに B−C=iF を使ってしまう。期初払いは d=i/(1+i) で、結果は 1+i
定着クイズ
Q1保険料 C と給付 B がともに年1回期初払いの定常状態にある年金制度で、予定利率を i、v=1/(1+i)、d=i/(1+i) とする。積立金 F が満たす式として正しいものはどれか。
Q2定常状態にある年金制度で、実際の運用利回りが予定利率より低い年が続いた場合の積立金の動きとして正しいものはどれか。
Q3定常状態の収支相等の式 B−C=dF において、F=0 とした場合に対応する財政方式はどれか。
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を整理して
B−C=dF、d=1+ii
F(1+i)+C−B=F を整理して
🔴 i と d の取り違えがこの論点の最大の失点源である。d は i より小さいので、同じ B−C に対して期初払いのほうが積立金は大きくなる(比はちょうど 1+i 倍)。式だけを覚えず、払い方とセットで覚える。
F=0 なら C=B で、これが賦課方式である。逆に C を標準保険料に置けば F は責任準備金に一致し、これが完全積立である。定常状態の収支相等は、財政方式の比較の出発点になる。
運用利回りが j になると Fn+1=(Fn+C−B)(1+j) で、n 年後は
Fn=(1+j)nF0+(C−B)(1+j)j(1+j)n−1
になる。C−B は定常状態の値で固定されているので、毎年おなじ倍率で増減するわけではない。
🔴 判定は「利回りがプラスかどうか」ではなく「予定利率を上回るかどうか」である。j がプラスでも j<i なら積立金は減り続ける。
・
でも、期初払いの積立金は期末払いの
倍になる。
d=i/(1+i) は
より小さいので割った結果が大きくなる。式を単独で覚えず、必ず払い方とセットで覚える。
積立金が減るかどうかは実際の利回りの符号では決まらない
判定基準は予定利率を上回るか下回るかである。トイモデルでは j=+1.0 パーセントでも20年で 0.78 倍まで減る。定常状態では毎年 dF の持ち出しがあり、それを埋めるのに予定利率ぶんの運用が要るため。
F=0 が賦課方式、C が標準保険料なら完全積立になる
収支相等の式の両端に、財政方式の両極が現れる。F=0 なら C=B で毎年の給付をその年の保険料で賄う賦課方式、C を標準保険料に置けば F は責任準備金に一致する。財政方式の比較はこの1本の式から始まる。
利回りが予定利率と違う年の積立金は等比数列にならない
C−B が定常状態の値で固定されているため、Fn=(1+j)nF0+(C−B)(1+j){(1+j)n−1}/j という2項の形になる。毎年おなじ倍率で減ると思って (1+j)n だけを掛けると必ず過大になる。
合併・制度統合の設問はこの式を積立金の側から使う
2019年度問題1(7)は、予定利率の異なる2つの定常状態の制度を合併し、保険料を合併前の合計に固定したまま、一定年数だけ給付に乗じる率を求めさせている。合併前の各制度に収支相等の式を当てて積立金を出し、合算した積立金が所定年数後に新しい定常状態の積立金に一致する条件を書くという順序になる。求めるのは保険料ではなく給付の調整率である。
なので
F=dB−C=0.01960788,536.59−6,717.45=0.01960781,819.14=92,775.95
これは B6(NEN062 以降)で決算の出発点として使う責任準備金 V0 と同じ値である。定常状態で標準保険料だけを払い込んでいるなら、完全積立の水準がそのまま責任準備金になるからである。
F=0.021,819.14=90,956.81
期初払いの 92,775.95 の 1/1.02 倍である。同じ保険料・給付でも払い方が違えば積立金は 1.8 パーセント違う。
C−B=−1,819.14 を固定したまま20年運用すると
| 実際の利回り j | 20年後の積立金 | 定常水準比 |
| −1.0 パーセント | 43{,}088.13 | 0.4644 |
| +1.0 パーセント | 72{,}748.16 | 0.7841 |
| +2.0 パーセント(=i) | 92{,}775.95 | 1.0000 |
🔴 j=+1.0 パーセントはプラスの利回りなのに、積立金は 20 年で 0.78 倍まで減る。予定利率 2.0 パーセントを下回っている限り、毎年 dF ずつの持ち出しを埋められないためである。
倍ずれる。本試験は払い方を必ず明示しているので、式を書く前に前提を読み直す。
実際の利回りがプラスなら積立金は減らないと思ってしまう。予定利率を下回っていれば減る。定常状態では毎年 dF の持ち出しがあることを忘れない。 利回りが変わった後の積立金を (1+j)nF0 だけで出してしまう。保険料と給付の差額が毎年入るので、その項の元利合計を足さなければならない。