定常状態における積立金とは|定義・公式とアクチュアリー試験の関連問題 | acpass年金数理・公式・積立金の推移
ひとことで言うと
積立金が年度をまたいでも動かなくなる水準。漸化式の不動点であり、極限方程式と呼ばれる1本の式で決まる。財政方式ごとの積立金水準の比較は、この値どうしを比べている。
漸化式の直線と45度線の交点が定常状態の積立金である。交点は目標値ではなく、収支が釣り合う点として決まる。
数式で表すと
F∗=iB−C(Ft+1=Ft となる水準) 定常状態とは積立金が年度をまたいでも変わらない状態、つまり Ft+1=Ft=F である。期初拠出の漸化式に入れると
F=(F+C−B)(1+i) ⟺ C+dF=B
試験に出る性質
定常状態の積立金は極限方程式 C + dF = B の解
期初拠出なら F=dB−C、期末拠出なら F=iB−C
例で見る
<計算の前提>
・トイモデル(B=8,536.59、d=0.0196078、i=2.0 パーセント)
・保険料総額は C=6,717.45
つまずきポイント
- 分母の d と i を取り違えない。期初拠出は d、期末拠出は i である。
- 「定常人口である」ことと「積立金が定常である」ことは別の仮定である。人員が定常でも財政方式を変えた直後は積立金は動いている。
- 極限方程式は C+dF=B
定着クイズ
Q1保険料と給付がいずれも年1回期初に発生する制度の定常状態で成り立つ式(極限方程式)はどれか。ただし d=1+ii とする。
Q2定常状態において、財政方式ごとの積立金の水準が保険料の水準と逆の順序になる理由はどれか。
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定常人口のもとで積立金が時間不変になる水準。各財政方式の積立金水準の比較はこの値どうしを比べる。漸化式の不動点として求まる。
となる。この式を極限方程式と呼ぶ。左辺は「保険料+積立金が生む利息」、右辺は「給付」で、入ってくるものと出ていくものが釣り合っていることを言っている。
F=dB−C(d=1+ii)
期末拠出の制度なら F=iB−C で、分母が d か i かだけが違う(比はちょうど 1+i)。
賦課方式は C=B なので F=0、完全積立方式は C=0 なので F=dB である。他の方式はこの間に並ぶ(NEN039)。つまり「積立金水準の順序」は「C の順序を逆さにしたもの」で、極限方程式1本から出てくる。
F が極限方程式を満たすなら、そこから漸化式を何回回しても動かない。逆に F がずれていれば、ずれは等比数列で増えるか減るかする(NEN053)。「定常状態の積立金」は目標値ではなく、漸化式の釣り合いの点である。
。両者の比はちょうど
である。
漸化式の不動点である
極限方程式を満たす F から漸化式を何回回しても動かない。ずれていれば等比数列でずれが縮む(NEN053)。
方式ごとの積立金の順序は保険料の順序の逆
F=dB−C で B は方式によらないので、C が大きい方式ほど F が小さい。賦課方式(F=0)と完全積立方式(F=B/d)が両端になる(NEN038・NEN039)。
極限方程式を毎年満たすように給付を再設定する応用がある
2025年度問題2(1)(イ)は、運用利回りが予定と違った年度の期末積立金が極限方程式を満たすような給付額を翌年度の給付額とする制度を考えさせる(3点)。このとき積立金の比は毎年 1+i1+j 倍になる。
(B3 の平準積立方式の値を借りる)
F=0.01960788,536.59−6,717.45=92,775.90
F0=92,775.90 から Ft+1=(Ft+C−B)(1+i) を400回回しても 92,775.90 のまま動かない。極限方程式は「収束先の予想」ではなく「動かない点の定義」である。
F=0.021,819.14=90,956.77 で、期初拠出の値の 1.021 倍。同じ制度設計でも拠出時期の前提だけで 2 パーセント動く。
賦課方式は C=B=8,536.59 なので F=0、完全積立方式は C=0 なので F=0.01960788,536.59=435,365.85。B3 の6方式の積立金はすべてこの間に入っている。
であって
ではない(期初拠出の場合)。
を括弧の外に出したことの帰結である。
定常状態の積立金は「積み立てるべき目標額」ではない。目標額に当たるのは責任準備金(NEN043)である。