手術保障保険とは|定義・公式とアクチュアリー試験の関連問題 | acpass生保数理・公式・第三分野・特約
ひとことで言うと
手術を受けたときに一時金を払う保険。手術の種類ごとに発生率も給付倍率も違うが、「発生率×倍率」を全種類ぶん足して1つの係数にまとめてしまえば、あとは普通の生命年金現価の計算に戻る。
手術種類ごとの「予定手術発生率×給付倍率」をすべて足して1つの合成係数にすれば、給付現価は年央割引と生命年金現価の積になる。
数式で表すと
A手術=v1/2t=1∑nDxDx+t−1j∑qcjBj(t) 手術種類を j、その予定手術発生率を qcj、第 t 保険年度の給付額を Bj(t)
試験に出る性質
手術給付の発生・支払は年央とされるため、給付現価には v1/2 が掛かる
「各手術の発生及び手術給付金の支払は年央に発生するものとし」というただし書きが10年で2回とも置かれている(2020年度問題2(8)・2024年度問題2(8))。年度末支払の死亡保険金と混同して v1/2 を落とすと、答えが選択肢1〜2段ぶんずれる。
手術種類が複数あっても、「発生率×倍率」の総和を1つの合成係数にまとめれば単一の生命年金現価で書ける
2024年度問題2(8)では発生率 1/50,1/80,1/100
例で見る
(2020年度問題2(8)を参考にした例)x 歳加入・保険期間20年・一時払の手術保障付生存保険を考える。第 t 保険年度の給付は手術種類1が 2−20t、手術種類2が 3−20t
つまずきポイント
- 年央発生の v1/2 を落とす。手術給付は死亡保険金と違って年度末支払ではない。
- 給付倍率が t の1次式のとき、(Ia¨) の係数を取り違える。B(t)=α−βt
定着クイズ
Q1保険期間20年の手術保障保険で、第 t 保険年度の給付額が手術種類1は 2−20t、手術種類2は 3−20t、予定手術発生率が qc1=2qc2(年齢によらず一定)、手術の発生と支払は年央とする。この手術給付現価として正しいものはどれか。
Q2上と同じ設計の手術保障付生存保険(保険期間20年・一時払)で、満期まで生存した場合に1を支払うとする。i=2.00%、a¨x:20=15.0、(Ia¨)x:20=120.0、生存保険の一時払純保険料 Ax:20 1=0.85 で、この保険の一時払純保険料が1であるとき、qc1 に最も近いものはどれか。
Q3手術種類1・2・3の予定手術発生率がそれぞれ 501,801,1001、給付倍率がそれぞれ 1,K,2K であるとき、給付現価を (合成係数)×v1/2×a¨x:n と書いたときの合成係数はどれか。
所定の手術を受けた際に給付する保険。手術発生率・給付倍率をもとに給付現価を評価し、入院保障と組み合わせて設計する。
とすると、給付現価は次のようになる。
A手術=v21t=1∑nDxDx+t−1j∑qcjBj(t)
手術の発生と手術給付金の支払は年央に起こるとされるのが通例なので、半年分の割引 v1/2 が前に出る。ここが第三分野の他の給付(年度末支払が多い)と違う点である。
出題では「手術種類1の発生率は手術種類2の2倍」のように、発生率どうしの比が条件として与えられる。比を使って全部を1つの発生率で表せば、未知数は1つに減る。あとは収支相等の式を1本立てるだけで解ける。
給付倍率が保険年度によらず一定なら、∑jqcjBj をそのまま括り出せて
A手術=v21(∑jqcjBj)a¨x:n
となる。手術給付の部分がまるごと1つの生命年金現価に化ける。
給付額が B(t)=α−βt のように t の1次式で減っていく設計もよく出る。このときは
t=1∑nDxDx+t−1(α−βt)=αa¨x:n−β(Ia¨)x:n
となり、a¨ と (Ia¨) の線形結合に落ちる。(Ia¨) が与件で渡されていたら、給付額が t の1次式になっていないかをまず疑うとよい。
手術給付金を受け取っても契約は続く。消滅するのは満期を迎えたときと死亡したときだけである。だから給付現価の重みは「その年度の始めに生存している人数」Dx+t−1 であって、まだ手術を受けていない人数ではない。「1年間に2回以上は発生しない」「各手術種類は互いに独立」というただし書きは、この重み付けを単純に保つために置かれている。
手術給付現価 A手術 を求めたら、あとは通常どおり予定新契約費・予定維持費・予定集金費を組み込んだ収支相等式を立てる。P∗ を年払営業保険料、α を新契約費、γ を維持費、β を集金費率とすると
P∗a¨x:m(1−β)=A手術+α+γa¨x:m
となる。手術保障に固有の部分は左辺ではなく右辺の A手術 だけである。
と倍率
から合成係数
501+40013K が得られ、給付現価は
(501+40013K)v1/2a¨x:10 となる。
給付額が保険年度 t の1次式のときは、給付現価が a¨ と (Ia¨) の線形結合になる
B(t)=α−βt なら αa¨x:n−β(Ia¨)x:n。与件に (Ia¨) が入っていたら給付額が t の1次式になっていないかをまず疑う(2020年度問題2(8))。
手術給付が発生しても契約は消滅せず、満期または死亡まで継続する
消滅条件は満期到達(と死亡)だけで、手術後に生存していれば契約は続く。したがって給付現価の重みは年度始の生存者数 Dx+t−1 である。「1年間に2回以上は発生しない」「各手術種類は独立」というただし書きは、この重み付けを単純に保つために置かれている。
営業保険料まで問われるときは、手術給付現価をそのまま通常の収支相等式に差し込む
P∗a¨x:m(1−β)=A手術+α+γa¨x:m。手術保障に固有なのは A手術 だけで、事業費の入り方は他の保険と変わらない(2024年度問題2(8))。
、発生率は
qc1=2qc2 とする。
種類1と種類2の合成係数は t の1次式になる。
2(2−20t)+(3−20t)=7−203t
v21qc2(7a¨x:20−203(Ia¨)x:20)
となる。満期の生存保険金1とあわせて一時払純保険料が1になるという条件から
Ax:20 1+v21qc2(7a¨x:20−203(Ia¨)x:20)=1
が立つ。i=1.00%・a¨x:20=18.1・Ax:20 1=0.81・(Ia¨)x:20=183.5 を入れると括弧の中は
7×18.1−0.15×183.5=126.7−27.525=99.175
qc2=1.01−1/2×99.1751−0.81=0.0019254
qc1=2×0.0019254=0.0038508
を得る。v1/2 を落とすと0.0038316、(Ia¨) の項を落とすと0.0030142になり、いずれも選択肢の別の位置に着地する。
の
をそのまま掛けること(
−203t なら係数は
)。
発生率の比の向きを逆にする。「種類1は種類2の2倍」なら qc1=2qc2 であって、未知数に選ぶのは小さいほうの qc2 にすると係数が整理しやすい。 「各手術は互いに独立」を「排反」と読み替える。独立なので同じ年度に別種類の手術が起こりうるが、給付現価は期待値の和なので単純に足してよい。手術発生後に契約が消滅すると考えて、給付現価の重みを「未手術者数」にしてしまう。消滅するのは満期と死亡のときだけである。