連続モデルの脱退力と昇給力とは|定義・公式とアクチュアリー試験の関連問題 | acpass年金数理・公式・年金数理の基礎
ひとことで言うと
「力」は単位時間あたりの相対変化率である。脱退力 μ は人数が減る速さ、昇給力 λ は給与が増える速さで、どちらも「率」ではなく「率の連続版」である。給与1あたりの量を扱う年金数理では、この2つが指数の肩に逆符号で並ぶ。
脱退力は人数を減らし、昇給力は給与を増やす。給与1あたりで見ると差 μ−λ だけが残り、割引と合わせて δ+μ−λ
数式で表すと
tpx=e−∫0tμx+udu,bxbx+t=e∫0tλx+udu,μ,λ 一定なら bxbx+ttpx=e−(μ−λ)t 連続モデルでは、脱退と昇給を単位時間あたりの相対変化率として与える。
μx=−l(x)l′(x),λx=b(x)b′(x)
試験に出る性質
「力」は率ではなく相対変化率である
μx=−l′(x)/l(x)、λx=b′(x)/b(x)
例で見る
<計算の前提>
・加入20歳・定年60歳(40年)、加入時の給与を 1 とする
・脱退力 μ=0.04、昇給力 λ=0.03、利力 δ=0.05
つまずきポイント
- 脱退力 μ は死力ではない。死亡以外の脱退(自己都合・定年前の退職)を含む合計の力なので、生保数理の記号をそのまま「死亡だけ」と読むと中途脱退の給付を落とす。
- 昇給力 λ と静態的昇給率 s を同じ数値として使わない。eλ=1+s
定着クイズ
Q1脱退力が μx=100−x1 で与えられるとき、20歳の加入者が60歳まで残存する確率 40p20 として正しいものはどれか。
Q2静態的昇給率が s=0.03(1年で給与が 1.03 倍)のとき、これに対応する昇給力 λ に最も近いものはどれか。
Q3脱退力 μ・昇給力 λ がいずれも一定のとき、加入時を 1 とした「残存者の給与の合計」の t 年後の割合として正しいものはどれか。
が現価計算の肩に立つ。力が年齢に依存すると指数の形にはならない。
脱退と昇給を単位時間あたりの力 μx・λx で与えたときに、残存者数と給与がどう動くかを決める設定。l′(x)=−μxl(x) と b′(x)=λxb(x) の2本から残存率と給与指数が指数型で書け、給与1あたりで見ると2つは逆向きに効く。
l′=−μl と b′=λb を積分すると
tpx=l(x)l(x+t)=e−∫0tμx+udu,bxbx+t=e∫0tλx+udu
になる。符号が逆なのは、脱退が人数を減らし昇給が給与を増やすからである。
残存者数と給与を掛けた「給与総額」の割合は e−(μ−λ)t で、μ と λ の差だけが残る。ここに割引 e−δt が乗ると、給与比例の現価計算はすべて δ+μ−λ を肩に持つ形になる。昇給力だけが符号が逆である。
2021年度問題2(2)は μx=100−x1 を与える。このとき
∫0t100−x−udu=log100−x−t100−x
なので tpx=100−x100−x−t となり、指数ではなく1次式になる。e−μt の形を暗記していると当てはめられない。
1年で給与が 1+s 倍になるなら eλ=1+s すなわち λ=log(1+s) である。静態的昇給率 s(NEN020)をそのまま λ に代入すると、40年で数パーセントずれる。
10年(2016〜2025年度)の年金数理で、脱退力が出るのは5行・26.0点、うち昇給力も同時に出るのが2行である(2026-09-01 実測)。昇給力だけが単独で出た年度は無い。設問は標準保険料率(2020年度問題1(8)・2022年度問題1(6)・2023年度問題1(3))と、ティーレの公式の導出(2021年度問題3(2))に分かれる。
と定義される。1年あたりの率
や
とは
e−μ=1−q 、
eλ=1+s で対応する。数値をそのまま入れ替えると40年で数パーセントずれる。
給与1あたりでは差 μ−λ だけが残る
残存者数 e−μt と給与指数 eλt を掛けると e−(μ−λ)t になる。割引 e−δt を乗せると給与比例の現価計算は δ+μ−λ を肩に持つ形にまとまり、これが NEN055・NEN085 の被積分関数の正体である。
力が年齢に依存すると指数にならない
2021年度問題2(2)は μx=1/(100−x) を与える。∫0tdu/(100−x−u)=log{(100−x)/(100−x−t)} なので tpx は1次式になる。e−μt を暗記していると当てはめられない。
昇給力が単独で問われた年度は無い
2016〜2025年度の年金数理で脱退力が出るのは5行・26.0点、うち昇給力も同時に出るのが2行である(2026-09-01 実測)。昇給力だけの設問は0行なので、昇給力は必ず脱退力とセットで準備してよい。
がいずれも一定
40p20=e−0.04×40=e−1.6=0.201897
b20b60=e0.03×40=e1.2=3.320117
人数は約 1/5 に減り、給与は約 3.3 倍になる。
0.201897×3.320117=0.670320=e−(0.04−0.03)×40=e−0.4
$\mu$ と $\lambda$ の差 $0.01$ しか効いていない。40年でも給与総額は3割しか減らない。
(3)給与現価は肩が $\delta+\mu-\lambda$ になる
∫040e−(0.05+0.04−0.03)tdt=0.061−e−0.06×40=0.061−0.090718=15.154701
λ を忘れて肩を δ+μ=0.09 にすると
0.091−e−3.6=0.091−0.027324=10.807514
給与現価が 28.7 パーセント過小になる。標準保険料率は給与現価が分母なので、保険料率は約1.40倍に膨らむ。式の形は整ったままなので、検算しないと気づかない。
(5)力が年齢に依存する場合(2021年度問題2(2)の形)
μx=100−x1 のとき、20歳から40年の残存率は
40p20=100−20100−20−40=8040=0.5
である。これを e−μ×40=0.5 と一定の力で置き換えると μ=40log2=0.017329 に相当し、年齢によらず一定という仮定は与えられていない限り置けない。
すなわち
λ=log(1+s) である。
残存率が e−μt になるのは μ が一定のときだけ。μx=1/(100−x) のように年齢に依存すると tpx=(100−x−t)/(100−x) の1次式になる。 給与1あたりで見ると昇給は「分母が伸びる」ので符号が逆に効く。総額の式の符号のまま写さない。λ を落としても式の形は整うので誤りに気づきにくい。給与現価が3割ずれ、保険料率は1.4倍に膨らむ。