開放基金方式とは|定義・公式とアクチュアリー試験の関連問題 | acpass年金数理・公式・財政方式の体系
ひとことで言うと
これから加入してくる人まで仲間に入れて、「将来の加入期間ぶんの給付」を全員でならして払う方式。すでに経過した加入期間ぶんは保険料の外に置き、未積立債務として別に償却する。
開放基金方式は将来期間分と将来加入見込者分を標準保険料でまかなう。残る受給者分と過去期間分が責任準備金で、積立金との差が未積立債務になる。
数式で表すと
P=GS将来期間分,U=S過去期間分−F 開放基金方式の標準保険料率は次の1本で決まる。
OANP=Ga+GfSFSa+Sf
試験に出る性質
標準保険料率は将来期間分と将来加入見込者分だけで決まる
OANP=(SFSa+Sf)/(Ga+Gf)
例で見る
<計算の前提>
・加入年齢 57歳、定年年齢 60歳、予定利率 2.0 パーセント、毎年 1,000 人が加入する定常状態
・残存数 l57 は 1,000、l58 は 900、l59 は 800、l60 は 700
・給付は加入期間に比例する(在職1年で3分の1、2年で3分の2)
・UP57=2.19875、UP58=2.49192
つまずきポイント
- 分子に過去期間分 SPSa を入れてはいけない。入れると加入年齢方式でも開放基金方式でもない別の方式になる。
- 未積立債務は Sp+SPSa−F
定着クイズ
Q1開放基金方式の標準保険料率の分子として正しいものはどれか。
Q2開放基金方式の責任準備金として正しいものはどれか。
Q3開放基金方式の制度で、年金受給権者の給付現価が 900、在職者の過去期間分が 800、将来期間分が 700、将来加入見込者分が 600、積立金が 1,500 であるとき、未積立債務に最も近いものはどれか。
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将来加入見込者を含めた給付現価と給与現価の比で標準保険料率を決める方式。将来期間分と過去期間分に分解して、過去期間分を未積立債務として別に償却する。
分子は将来の加入期間に対応する給付現価(在職者分+将来加入見込者分)、分母はその人たちが将来払う保険料の現価(給与現価または人数現価)である。「開放」は将来加入見込者を計算に入れることを指す。
分子に SPSa(在職者の過去期間分)が入っていないのがこの方式の要である。過去期間分は責任準備金として持つべきものであって、これからの保険料でまかなうものではない。したがって責任準備金は
V=(Sp+SPSa+SFSa+Sf)−OANP(Ga+Gf)=Sp+SPSa
ときれいに潰れる。定義から OANP(Ga+Gf)=SFSa+Sf なので、将来期間分と将来加入見込者分が両側で相殺されるからである。未積立債務は
U=Sp+SPSa−F
で、「過去期間分と受給者分が、どれだけ積み立て済みか」だけを見ればよい。
OANP=∑xlx∑xUPxlx
つまり年齢別保険料 UPx を被保険者数 lx で加重平均したものである。加入年齢方式が Dx=vxlx で加重するのに対し、開放基金方式は割引を掛けずに人数だけで加重する。vx は高齢ほど小さいので、加入年齢方式のほうが若年に重みが寄り、保険料は低くなる。
EP<OANP
分子・分母の両方に Sf・Gf が入っているので、将来加入者数の見込みを変えると標準保険料率が変わる。財政再計算の設問でよく問われる論点である。
。在職者の過去期間分
は分子に入らない。2018年度問題2(4)①・2024年度問題3(1)(イ)はこの定式化を直接問う。
責任準備金は Sp+SPSa に潰れる
定義から OANP(Ga+Gf)=SFSa+Sf なので、将来期間分と将来加入見込者分が相殺される。2022年度問題1(7)(未積立債務 900+800−1,500=200)と2025年度問題1(6)(責任準備金 9,500+16,400=25,900)の2年度とも、公式解はこの潰れた形を使っている。
加入年齢方式より標準保険料は高くなる
OANP は UPx の lx 加重平均、EP は Dx=vxlx 加重平均である。vx が高齢ほど小さいぶん加入年齢方式は若年に重みが寄るので EP<OANP となる。そのぶん開放基金方式は未積立債務が小さく、償却が早く終わる(2025年度問題1(6)は償却年数が4年短いことを問う)。
将来加入見込者数の見込みを変えると標準保険料率が動く
Sf と Gf が分子・分母の両方に入っているため。2022年度問題1(7)は、将来加入者を10年間だけ50パーセント水準に落とす見込み変更を計算させる(5点)。一方で未積立債務は Sp+SPSa−F なので見込み変更の影響を受けない。
計算基礎率どおりに推移すれば剰余も不足も出ない
2023年度問題2(3)(ア)は、開放基金方式で計算基礎率どおりに推移した場合の翌年度末剰余金を問う(3点)。標準保険料と特別保険料が予定どおり入り、予定利率どおりに運用されれば、責任準備金と積立金の差は予定どおりに縮む。
、
UP59=2.85948
OANP=1000+900+8002.19875×1000+2.49192×900+2.85948×800=2,7006,729.06=2.4922
加入年齢方式の EP=2.4879 より高い。
(2)定義どおりに組み立てても同じ値になる。将来期間分の給付現価は 1000×6.5963+900×32×7.4758+800×31×8.5784=6,773.03、在職者の人数現価は 2,484.31。将来加入見込者は毎年1,000人ずつ加わるので、その分は1年分を i で割ったものになり、給付現価 329,815・人数現価 132,564。合計して
OANP=2,484.31+132,5646,773.03+329,815=2.4922
(3)本試験の数値でも確かめる。2022年度問題1(7)は SFSa=700、Sf=600、Ga=8,400、Gf=10,000、F=1,500、Sp=900、SPSa=800 を与える。将来加入見込を10年間だけ半分に落とすと Sf と Gf が同じ比率(約 0.793)で縮み、標準保険料率は
8,400+7,926700+476=0.072
未積立債務は U=900+800−1,500=200 で、将来加入見込の見込みを変えても未積立債務は動かない。将来加入見込者分は責任準備金に残らないからである。
であって
の
に将来期間分を含めない。
将来加入見込者の給付現価は「1年分 ÷ 予定利率」ではなく、期初払いなら「1年分 × 期初払い永久年金現価率 1/d」になる年度がある。設問の払込時期を確認する。 EP<OANP の向きを逆に覚えない。Dx 加重(加入年齢方式)のほうが若年に重みが寄って低くなる。