acpass

モーメント

知識マップ

確率用語

ひとことで言うと

モーメント(積率)は、分布の形を数値でとらえるための「ものさし」の一族です。1次は平均(位置)、2次は分散(広がり)、3次は歪み、4次はとがり具合、というように、次数を上げるほど分布の細かい特徴を測れます。どこを基準に測るか(原点か平均か)で「原点まわり」と「中心まわり」に分かれます。

指数分布Exp(λ=2)の右に歪んだ密度曲線。1次の原点モーメントE[X]=0.5が分布の重心(縦線)で、右側に伸びる裾の重さが3次以上の高次モーメント(歪度・尖度)に効く。原点まわり・中心まわり・標準化という3種のモーメントを橋渡しする図1次モーメント=重心。右の裾の重さが高次モーメント(歪度・尖度)に効くE[X]=0.5重い右裾→歪度2・尖度9密度x

指数分布 Exp(λ=2)\mathrm{Exp}(\lambda=2) の右に歪んだ密度。1次の原点モーメント E[X]=0.5E[X]=0.5 が分布の重心(縦線)。右側に長く伸びる裾の重さが、3次以上の高次モーメント(歪度・尖度)に効いてくる。

数式で表すと

μk=E[(Xμ)k]\mu_k=E[(X-\mu)^k]

E[Xk]E[X^k](原点まわり)や中心まわりの積率。平均・分散・歪度などの基礎量。

モーメント(積率)とは、確率変数 XX のべき乗の期待値として定義される一連の量で、分布の形を段階的に特徴づけます。基準をどこに置くかで2種類あります。ひとつは原点(0)を基準にした原点まわりのモーメント mk=E[Xk]m_k=E[X^k] で、m1=E[X]m_1=E[X] はまさに平均(concept: 期待値)そのものです。もうひとつは平均 μ=E[X]\mu=E[X] を基準にした中心まわりのモーメント μk=E[(Xμ)k]\mu_k=E[(X-\mu)^k] で、2次の中心モーメント μ2=E[(Xμ)2]\mu_2=E[(X-\mu)^2] はまさに分散(concept: 分散)そのものです。原点モーメントと中心モーメントは互いに変換でき、μ2=m2m12\mu_2=m_2-m_1^2(分散=E[X2]E[X]2E[X^2]-E[X]^2)はよく使う関係です。 高次のモーメントには直感的な意味があります。標準偏差 σ=μ2\sigma=\sqrt{\mu_2} で割った標準化モーメントを使うと、分布の形だけを取り出せます。3次の標準化モーメントは歪度(skewness)歪度=μ3/σ3\text{歪度}=\mu_3/\sigma^3 で、分布が左右どちらに偏っているかを測ります。4次の標準化モーメントは尖度(kurtosis)尖度=μ4/σ4\text{尖度}=\mu_4/\sigma^4 で、裾の重さ・とがり具合を測ります(正規分布で3、そこからの超過分を超過尖度と呼ぶ)。 実際に指数分布 XExp(λ=2)X\sim\mathrm{Exp}(\lambda=2) で計算してみましょう。E[X]=1/λ=0.5E[X]=1/\lambda=0.5E[X2]=2!/λ2=2/4=0.5E[X^2]=2!/\lambda^2=2/4=0.5 なので、分散は Var[X]=0.50.25=0.25\mathrm{Var}[X]=0.5-0.25=0.25σ=0.5\sigma=0.5)。3次の中心モーメントは μ3=2/λ3=0.25\mu_3=2/\lambda^3=0.25 で、歪度 =0.25/0.53=0.25/0.125=2=0.25/0.5^3=0.25/0.125=2。指数分布の歪度は常に2で λ\lambda に依存しないという性質が確認できます。4次の中心モーメントは μ4=9/λ4=9/16=0.5625\mu_4=9/\lambda^4=9/16=0.5625 で、尖度 =0.5625/0.54=0.5625/0.0625=9=0.5625/0.5^4=0.5625/0.0625=9(超過尖度6)。これも λ\lambda によらず常に9です。

試験に出る性質

原点まわりのモーメント

mk=E[Xk]m_k=E[X^k]m1=E[X]m_1=E[X] は平均そのもの(concept: 期待値)。

中心まわりのモーメント

μk=E[(Xμ)k]\mu_k=E[(X-\mu)^k]μ2\mu_2 は分散そのもの(concept: 分散)。μ2=m2m12\mu_2=m_2-m_1^2 で変換できる。

歪度(3次標準化)

μ3/σ3\mu_3/\sigma^3。分布の左右の偏りを測る。正なら右に裾が長い。指数分布では常に2(λ\lambda 非依存)。

尖度(4次標準化)

μ4/σ4\mu_4/\sigma^4。裾の重さ・とがりを測る。正規分布で3。指数分布では常に9(超過尖度6)。

MGFとの関係

concept: モーメント母関数を kk 回微分して0を代入すると mkm_k が得られる(mk=M(k)(0)m_k=M^{(k)}(0))。

例で見る

XExp(λ=2)X\sim\mathrm{Exp}(\lambda=2)E[X]=0.5E[X]=0.5E[X2]=0.5E[X^2]=0.5 より Var[X]=0.25\mathrm{Var}[X]=0.25σ=0.5\sigma=0.5)。 μ3=0.25\mu_3=0.25 で歪度 =0.25/0.125=2=0.25/0.125=2μ4=0.5625\mu_4=0.5625 で尖度 =9=9。どちらも λ\lambda に依存しない。

つまずきポイント

  • 原点まわり mk=E[Xk]m_k=E[X^k] と中心まわり μk=E[(Xμ)k]\mu_k=E[(X-\mu)^k] を混同する(分散は中心の2次。E[X2]E[X^2] そのものではない)
  • 歪度・尖度で標準偏差による割り算を忘れる(生の μ3,μ4\mu_3,\mu_4 ではなく μ3/σ3, μ4/σ4\mu_3/\sigma^3,\ \mu_4/\sigma^4 にして単位をそろえる)
  • 尖度の基準を取り違える(正規分布の尖度は3。そこからの超過分が超過尖度。指数分布は尖度9=超過尖度6)

定着クイズ

中心まわりの kk 次モーメント μk\mu_k の定義は?

XExp(λ=2)X\sim\mathrm{Exp}(\lambda=2) の歪度 μ3/σ3\mu_3/\sigma^3 は?(μ3=0.25, σ=0.5\mu_3=0.25,\ \sigma=0.5

正規分布の尖度の値は?(超過尖度の基準)

この用語を扱う問題(1