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投資理論・用語・株式投資分析
NPV法は「いま決めて、あとは何もしない」前提で計算する。実際の経営は、悪くなれば止められるし、良くなれば増やせる。この「あとで決め直せる」ぶんの価値がリアル・オプション。
事業投資の意思決定に残された経営の柔軟性(延期する・拡大する・中断と再開を選ぶ・撤退する)を、金融オプションになぞらえて金額評価するモデル。柔軟性を考えない静的NPVに柔軟性の価値を上乗せして拡張NPVを求める。オプションは権利であって義務ではないため上乗せ分は非負で、拡張NPVが静的NPVを下回ることはない。価値が上がったときだけ行使する型(延期・拡大・再開)はコール、価値が下がったときに行使する型(撤退・縮小)はプットに対応する。
リアル・オプションの主な型と、対応する金融オプション: ①延期オプション:投資の実行そのものを先送りし、条件が良くなってから実行する権利。価値が上がったときだけ行使するのでコール型。 ②拡大(成長)オプション:小規模に始めた事業を、需要が伸びた段階で追加投資して大きくする権利。コール型。 ③中断・再開(スイッチ)オプション:価格や需要に応じて操業を止めたり再開したりする権利。再開する側を見ればコール型。 ④撤退(放棄)オプション:事業をやめて資産を売却価額で手放す権利。価値が下がったときに行使するのでプット型。 ⑤段階的投資:将来の投資機会を、いま小さく買っておく形。②と同じ系統。
評価の考え方は「静的NPV+オプション価値=拡張NPV」。オプション価値の算定には二項モデルなど金融オプションの評価手法を流用する。
利用が難しい理由も本試験で問われる。現実の投資案件は状態が多く定式化しにくいこと、金融オプション評価が前提とする完備市場が実物資産の市場では成り立たないこと、原資産にあたる事業価値が市場で観測できないことが挙げられる。
リアル・オプションは企業価値評価の大問の中で出る
2017年度(問題13(2))と2021年度(問題14(2))の2年度・合計3.0点で出題されている。どちらも同じ大問の他の枝が配当割引モデル・フランチャイズ価値モデル・残余利益モデルの企業価値評価であり、デリバティブの大問ではない。2017年度は同じ問題13の別の枝で、評価モデルの名称を選ばせる設問の選択肢としてもリアル・オプション評価モデルが並んでいる。
型の名称と金融オプションの対応が問われる
2017年度は、資源価格や備蓄状況に応じて採掘量や新規プラント開発を決めることがどの型に当たるかと、対応する金融オプションの種類を空欄で答えさせている。ここでの決め手は「価値が上がったときだけ行使するか、下がったときに行使するか」で、前者ならコール、後者ならプットになる。型の名前を丸暗記するより、行使する向きで判断するほうが速い。
利用が困難な要因と型の説明が正誤の肢になる
2021年度は、評価モデルの定義・利用が困難である要因・延期オプションの説明・撤退オプションの性質の4記述から正しいものをすべて選ばせている。撤退オプションをコール的と述べる肢と、拡大オプションの内容を延期オプションとして述べる肢が誤りにあたる。定義と要因の2肢は正しく、型の説明の2肢が誤りという構成だった。
鉱山の操業。資源価格が高いときだけ採掘し、安いときは休止して価格の回復を待てるなら、この「休止と再開を選べること」自体に価値がある。価値が上がったときだけ行使するのでコール型(中断・再開オプション)。
事業から撤退して資産を売却価額で手放す権利(撤退オプション)は、金融オプションのどれに対応するか。
柔軟性を考えない静的NPVと、リアル・オプションを織り込んだ拡張NPVの関係として正しいものはどれか。
小規模なパイロットプラントを先に建てて技術を確立しておき、需要が伸びた段階で本格的な生産設備へ増設する。この「あとで大きくできる」ことの価値は、リアル・オプションのどの型か。