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会計・用語・財務諸表・簿記の仕組み
1年間で純資産がどれだけ増えたか(増資や配当のような株主とのやりとりを除いて)を丸ごと測ったものが包括利益。そのうち「もう実現した」部分が当期純利益、「まだ含み益のまま」の部分がその他の包括利益。含み益が実現したときに、その他の包括利益から当期純利益へ席を移すのがリサイクリング。
リサイクリングは包括利益の総額を変えず、当期純利益とその他の包括利益の配分だけを変える。
特定期間における純資産の変動額のうち、企業所有者である株主との直接的な取引によらない部分。当期純利益(事業の利益)とその他の包括利益(OCI)から構成される。OCIのうち当期に実現した部分を当期純利益へ組み替える処理をリサイクリング(組替調整)という。
包括利益は次の2通りの見方で同じ金額になる。
(1) 純資産の変動額のうち、株主との直接的な取引(増資・配当・自己株式の取得など)によらない部分 (2) 当期純利益 + その他の包括利益(OCI)
その他の包括利益に入る代表例は、その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益、為替換算調整勘定、退職給付に係る調整額である。これらは貸借対照表では純資産の部に「その他の包括利益累計額」としてストックで積み上がり、損益計算書側(包括利益計算書)では当期の増減がフローで表示される。
リサイクリング(組替調整)とは、過年度にOCIとして計上した含み損益が当期に実現したとき、その分をOCIから控除して当期純利益に含める処理をいう。日本基準はリサイクリングを行う。
計算の型は決まっている。その他有価証券を期中に一部売却した設定で、
・リサイクリングをしない場合のOCI = 期末まで保有し続けた分の、当期の時価変動額 ・リサイクリングをする場合のOCI = 上記 - 売却した分について前期末までに計上していた評価差額(組替調整額)
となる。前者は「保有継続分の値動き」、後者は「貸借対照表の評価差額の増減額」に等しい。
なおリサイクリングの有無で包括利益の総額は変わらない。変わるのは当期純利益とOCIへの配分だけである。
包括利益の定義は「純資産の変動額のうち株主との直接的な取引によらない部分」
当期純利益(事業の利益)とその他の包括利益から構成される。この定義文そのものが2017年度問題3(5)で正誤の肢として、2021年度問題1(3)で語句空欄として出題された。増資・配当・自己株式の取得は株主との直接的な取引なので包括利益に含まれない。
リサイクリングをする場合のその他の包括利益は、貸借対照表の評価差額の増減額に等しい
2019年度問題4(4)は評価差額40→50で解答10、2025年度問題5(3)は50→60で解答10。どちらもB/Sの差額をとるだけで選択肢に着地する。時間がないときの検算・逆算に使える。
リサイクリングをしない場合のその他の包括利益は、期末まで保有し続けた分の時価変動額だけ
売却した分について過年度に計上した評価差額は、当期純利益を経由せず直接に利益剰余金へ振り替えられる。2019年度問題4(4)では、当期末時価100と当期末保有分の前期末時価70の差である30が答えになった。
リサイクリングの有無で包括利益の総額は変わらない
変わるのは当期純利益とその他の包括利益への配分だけ。2019年度の設定では、しない場合が50+30、する場合が70+10で、いずれも包括利益は80になる。
四半期財務諸表で開示を省略できるのはキャッシュ・フロー計算書であり、包括利益計算書は省略できない
2017年度問題2(5)で、損益計算書・包括利益計算書・キャッシュ・フロー計算書のうち省略可能なものを問う形で出題された(正解はキャッシュ・フロー計算書のみ)。
例(2019年度 問題4(4)・2025年度 問題5(3)と同型)
D社は前期末にその他有価証券を保有しており、貸借対照表の有価証券は160万円、評価差額は60万円であった(取得原価100万円)。当期首にこの有価証券の半分を時価80万円で売却し、当期末に保有し続けている分の時価は120万円になった。事業からの利益は200万円、税効果は考慮しない。
(1) 売却分の取得原価は 100÷2=50万円、前期末時価は 160÷2=80万円。売却益 = 80-50=30万円。
(2) 保有継続分の前期末時価も80万円。当期末は120万円なので、当期の時価変動額は 120-80=40万円。
(3) 売却分について前期末までに計上していた評価差額(組替調整額)は 60÷2=30万円。
リサイクリングをしない場合
その他の包括利益 = 40万円(保有継続分の値動きだけ)
当期純利益 = 200万円(売却益は損益計算書を通さない)
包括利益 = 240万円
リサイクリングをする場合
その他の包括利益 = 40-30=10万円
当期純利益 = 200+30=230万円
包括利益 = 240万円
(注1)両者の包括利益は一致する。リサイクリングをする場合は売却益30万円を当期純利益に入れる代わり、同額をその他の包括利益から控除しているだけである。
(注2)当期末の評価差額は 120-50=70万円で、前期末60万円からの増減は+10万円。これはリサイクリングをする場合のその他の包括利益に一致する。
(注3)設問では売却価額が前期末の時価と一致するように設定されるのが通例である(2019年度も2025年度もそう作られている)。一致しない設定なら、売却分についても前期末から売却日までの値動きが当期のその他の包括利益に加わる。
H社は前期末にその他有価証券(取得原価200万円、時価320万円、評価差額120万円)を保有していた。当期首にその半分を時価160万円で売却し、当期末に保有し続けている分の時価は250万円になった。税効果は考慮しない。リサイクリングをする場合の当期のその他の包括利益はいくらか。
包括利益に関する記述として正しいものはどれか。
その他有価証券を期中に一部売却した場合の、その他の包括利益(OCI)に関する記述として正しいものはどれか。