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無記憶性

知識マップ

確率定理

ひとことで言うと

「これまでどれだけ待ったか・続けたかという過去の情報が、これから先の確率にまったく影響しない」という性質です。何回失敗していても、次に成功する確率は最初の1回目と同じ、という“過去を覚えていない”性質を指します。

上段はすでにs経過した上でさらにt経過する確率、下段は最初からt経過する確率。無記憶性ではこの2つが等しいP(X>s+t | X>s) = P(X>t):過去の経過は将来に影響しない0123456すでに s 経過(既知)あと t(条件付き)最初から t経過回数緑の長さ(あとt回の確率)はどちらも同じ

上段は「すでに ss 経過した上で、さらに tt 先まで起きない確率」、下段は「最初から tt 先まで起きない確率」。無記憶性ではこの2つ(緑の長さ)が等しい。

数式で表すと

P(X>s+tX>s)=P(X>t)P(X>s+t\mid X>s)=P(X>t)

P(X>s+tX>s)=P(X>t)P(X>s+t\mid X>s)=P(X>t)。指数分布(連続)と幾何分布(離散)だけがもつ。

無記憶性は P(X>s+tX>s)=P(X>t)P(X>s+t\mid X>s)=P(X>t) で定義されます。左辺は「すでに ss を超えて待った(あるいは ss 回失敗した)という条件のもとで、さらに tt 先まで起きない確率」、右辺は「最初から tt 先まで起きない確率」。これが等しいとは、過去に費やした ss がこれから先の見通しを一切変えない、ということです。 この性質をもつ分布は限られていて、連続では指数分布だけ、離散では幾何分布だけです。証明の鍵は生存確率 P(X>x)P(X>x) が指数的な形(連続は eλxe^{-\lambda x}、離散は (1p)x(1-p)^x)をしていることで、条件付き確率を計算すると ss の項がきれいに約分されて消えます。 アクチュアリーで気をつけたいのは、現実の寿命や故障はふつう無記憶ではない点です。人は歳をとるほど死亡率(ハザード)が上がり、機械は使うほど壊れやすくなります。無記憶性はハザードが一定の理想化であって、免責期間の扱いなどで「経過時間を無視してよいか」を判断する際の基準として使います。

試験に出る性質

定義

P(X>s+tX>s)=P(X>t)P(X>s+t\mid X>s)=P(X>t)。過去の経過が将来に影響しない。

連続では指数分布だけ

連続分布で無記憶性をもつのは指数分布のみ(生存確率が eλxe^{-\lambda x})。

離散では幾何分布だけ

離散分布で無記憶性をもつのは幾何分布のみ(生存確率が (1p)x(1-p)^x)。

ハザード一定と同値

無記憶性は瞬間故障率(ハザード関数)が時間によらず一定であることと同じ。

現実は非無記憶が普通

人の死亡や機械の摩耗はハザードが増加し無記憶ではない。理想化である点に注意。

例で見る

成功確率 p=0.2p=0.2 の試行を繰り返す(初成功までの回数は幾何分布)。すでに3回失敗したとき、さらにあと2回以内に成功する確率は P(X3+2X>3)=P(X2)=1(0.8)2=0.36P(X\le 3+2\mid X>3)=P(X\le 2)=1-(0.8)^2=0.36。 最初から数えても2回以内の成功確率は0.36で同じ。

つまずきポイント

  • 「これまで起きなかったからそろそろ起きやすい(または起きにくい)」と考える(無記憶性では変わらない)
  • 無記憶性を一般の分布にも当てはめる(指数分布・幾何分布だけの性質)
  • 現実の寿命・故障を無記憶と仮定してしまう(実際はハザードが変化することが多い)

定着クイズ

無記憶性の定義として正しい式は?

連続分布で無記憶性をもつのは?

無記憶性をもつ離散分布は?

この用語を扱う問題(2