確率・定理
ひとことで言うと
加法性(再生性)とは『同じ族の独立な分布を足すと、また同じ族に戻る』性質です。ポアソンどうしの和はポアソン、正規どうしの和は正規——ただし二項やガンマは"同じパラメータ"でないと成り立ちません。なぜ成り立つのか、その統一的な理由がモーメント母関数(MGF)です。
加法性をもつ主要分布。Pois(3)+Pois(5)=Pois(8) をMGFの積で示す。正規は分散が加算、二項は同じ p のとき n が加算、ガンマは同じ β のとき α が加算、χ2 は自由度が加算。B(3,0.4)+B(5,0.6) は二項にならない。
数式で表すと
Pois(λ1)+Pois(λ2)=Pois(λ1+λ2)
同じ族で再生性をもつ分布の和の法則。例:独立ポアソンの和はポアソン(率は和)。
加法性(再生性)とは、ある分布族に属する独立な確率変数の和が、ふたたび同じ分布族に属する性質です。代表的なのがポアソン分布で、X∼Pois(λ1) と Y∼Pois(λ2) が独立なら X+Y∼Pois(λ1+λ2)——率がそのまま加算されます。主要な分布の加法性:N(μ1,σ12)+N(μ2,σ22)=N(μ1+μ2,σ12+σ22)(平均も分散も加算)、Pois(λ1)+Pois(λ2)=Pois(λ1+λ2)(率が加算)、χk12+χk22=χk1+k22(自由度が加算)。条件付きで加法性をもつのが二項分布とガンマ分布です:B(n1,p)+B(n2,p)=B(n1+n2,p) は同じ p のときだけ、Gamma(α1,β)+Gamma(α2,β)=Gamma(α1+α2,β) は同じ尺度 β のときだけ成り立ちます。
なぜ加法性が成り立つのか——モーメント母関数(MGF)を使えば統一的に証明できます。鍵となる事実は『独立な和のMGFは、各MGFの積になる』こと、すなわち X,Y 独立のとき MX+Y(t)=MX(t)MY(t) です。さらにMGFには『分布とMGFは1対1に対応する』という一意性があるので、積を計算した結果がある分布のMGFと一致すれば、和はその分布だと確定できます。ポアソンで実演すると、MPois(λ)(t)=exp(λ(et−1)) なので
MX+Y(t)=eλ1(et−1)⋅eλ2(et−1)=e(λ1+λ2)(et−1)
となり、これはまさに Pois(λ1+λ2) のMGFそのもの。
この『MGFの積』の視点から、二項・ガンマでパラメータ制約が要る理由も見えます。二項のMGFは MB(n,p)(t)=(1−p+pet)n で、底 (1−p+pet) が p に依存します。p が同じなら積は (1−p+pet)n1+n2 ときれいに指数がまとまり B(n1+n2,p) になりますが、p が違うと底が違って二項のMGFの形になりません。だから B(3,0.4)+B(5,0.6) は二項分布になりません。ガンマも同様で、β が共通のときだけ形状 α が加算されます。『同じ族+共通パラメータ+独立』の3条件がそろって初めて加法性が働く、と覚えてください。試験に出る性質
MGFの積が本質
独立なら MX+Y(t)=MX(t)MY(t)。MGFの一意性で、積がある分布のMGFと一致すれば和はその分布と確定する。
無条件で加法性をもつ族
正規(平均・分散とも加算)、ポアソン(率が加算)、カイ二乗(自由度が加算)。独立でさえあれば和が同族に戻る。
パラメータ制約つきの族
二項は同じ p のとき n が加算、ガンマは同じ尺度 β のとき形状 α が加算。共通パラメータが必須。
独立性が前提
加法性は独立な和に対する性質。従属だと和のMGFが積に分解できず、同族に戻る保証はない。
閉じない分布もある
一様分布や対数正規は和に関する再生性をもたない。和をとると別の分布になる(一様の和は三角形など)。
例で見る
ポアソンの加法性をMGFで証明する。MPois(λ)(t)=exp(λ(et−1)) なので、独立な X∼Pois(3), Y∼Pois(5) に対し
MX+Y(t)=e3(et−1)⋅e5(et−1)=e8(et−1)=MPois(8)(t)。よって X+Y∼Pois(8)。
二項の注意:B(3,0.4)+B(5,0.4)=B(8,0.4) は成立(同じ p)。一方 B(3,0.4)+B(5,0.6) は p が違うので二項分布にならない。
つまずきポイント
- 二項・ガンマでパラメータが違っても加算できると思う(B(3,0.4)+B(5,0.6) は二項にならない。p や β が共通のときだけ加法性が働く)
- 従属な場合にも和が同族に戻ると思い込む(加法性は独立が前提。従属だとMGFが積に分解できず保証されない)
- あらゆる分布が和で閉じると誤解する(一様・対数正規などは再生性をもたない。和は別の分布になる)
定着クイズ
独立な X∼Pois(3),Y∼Pois(5) の和の分布は?
加法性の証明で使うMGFの性質は?
二項分布が加法性をもつのはどんなとき?