確率・公式
ひとことで言うと
2つの確率変数の和 X+Y を扱うとき、欲しいのが『平均・分散だけ』なのか『分布そのもの』なのかで方法が変わります。平均は常に足すだけ、分散は独立なら足すだけ。でも"どんな分布になるか"は、加法性・畳み込み・MGFのどれを使うかを状況で選ぶ必要があります。
和 X+Y の求め方の使い分け。①同族+加法性なら再生性、②独立だが異なる族なら畳み込み/MGFの積、③独立でないなら平均・分散のみ(Cov 項が残る)。例:N(2,4)+N(1,9)=N(3,13)。
数式で表すと
Var(X+Y)=VarX+VarY+2Cov(X,Y)
独立な確率変数の和:期待値は和、分散も和(独立時)。正規どうしは正規。
確率変数の和 X+Y について、まずモーメント(平均・分散)は機械的に求まります。期待値はいつでも E[X+Y]=E[X]+E[Y](独立性すら不要、線形性だけ)。分散は
Var(X+Y)=Var(X)+Var(Y)+2Cov(X,Y)
で、独立(より弱くは無相関)なら Cov=0 なので Var(X+Y)=Var(X)+Var(Y) となります。ここまでは平均と分散という数値の話です。
実務でしばしば必要になるのは、和の分布そのものです。これは状況に応じて3つの方法を使い分けます。(1) 同じ族で加法性がある場合——正規どうし・ポアソンどうしなどは、加法性(再生性)をそのまま使えます。(2) 独立だが異なる族の場合——加法性が使えないので、密度の畳み込み fX+Y(z)=∫fX(x)fY(z−x)dx を計算するか、MGFの積 MX+Y(t)=MX(t)MY(t) を求めてから分布を読み取ります。(3) 独立でない場合——和の分布を一般に閉じた形で書くのは難しく、多くの場面では平均と Cov 項を含む分散だけを求めて済ませます。
この『モーメントは簡単、分布は方法を選ぶ』という二段構えが和を扱う核心です。具体例で確認しましょう。X∼N(2,4), Y∼N(1,9) が独立とします。モーメントは平均 =2+1=3、分散 =4+9+2⋅0=13(独立なので Cov=0)。分布は——正規どうしの加法性(方法(1))から X+Y∼N(3,13) と一発で決まります。試験では『平均・分散を出すだけの問題』と『分布まで聞く問題』を読み分け、後者では加法性が使えるかをまず確認するのが定石です。試験に出る性質
期待値は常に加算
E[X+Y]=E[X]+E[Y]。独立でなくても線形性だけで成り立つ最も基本的な公式。
分散はCov項つき
Var(X+Y)=VarX+VarY+2Cov(X,Y)。独立/無相関なら Cov=0 で単純な和になる。
同族+加法性→再生性
正規・ポアソンなど加法性をもつ族なら、和の分布はパラメータを足すだけで同族に決まる。
独立・異族→畳み込み/MGF
族が違うときは畳み込み積分かMGFの積で和の分布を求める。MGFのほうが積の計算で済むぶん楽なことが多い。
従属→モーメントのみが現実的
独立でないと和の分布を閉じた形で書くのは難しく、平均と Cov 込みの分散だけを使うことが多い。
例で見る
X∼N(2,4), Y∼N(1,9) が独立。
モーメント:E[X+Y]=2+1=3、Var(X+Y)=4+9+2⋅0=13(独立なので Cov=0)。
分布:正規の加法性より X+Y∼N(3,13)(平均3・分散13)。族が一致するので再生性で一発で決まる。
つまずきポイント
- 独立でないのに分散を VarX+VarY とする(従属なら +2Cov が必要。和の分散は常に Cov 項を含む)
- 族が違うのに加法性で和の分布を決めようとする(再生性は同族限定。異族なら畳み込みかMGFの積に切り替える)
- 平均・分散が出れば分布も決まると思う(モーメントが同じでも分布は一意でない。分布を聞かれたら加法性などで形を特定する)
定着クイズ
独立な X∼N(2,4),Y∼N(1,9) の和の分布は?
和の分散の一般公式は?
独立だが異なる族の和の分布を求める方法は?