確率・公式
ひとことで言うと
線形結合 aX+bY は、和(a=b=1)も差(a=1,b=−1)もまとめて扱える『マスター公式』です。分散は a2VarX+b2VarY+2abCov。係数を選ぶことでリスク(分散)を意図的に小さくする——これがポートフォリオやヘッジの数理そのものです。
X∼N(100,400), Y∼N(80,900), Cov(X,Y)=180。合計 L=X+Y の分散 1660 に対し、ヘッジ後 Z=X−0.5Y の分散は 445。係数 (a,b) の選び方で分散リスクを大きく下げられる。
数式で表すと
Var(aX+bY)=a2VarX+b2VarY+2abCov
aX+bY の期待値と分散。独立な正規の線形結合は再び正規。
一般の線形結合 aX+bY の期待値と分散は、次のマスター公式でまとまります。期待値は線形性から E[aX+bY]=aE[X]+bE[Y](常に成立)。分散は
Var(aX+bY)=a2Var(X)+b2Var(Y)+2abCov(X,Y)
です。係数が二乗で効くこと(a2,b2)、そしてクロス項に 2abCov が付くことがポイントです。この1本の式から、和(a=b=1)も差(a=1,b=−1)も定数倍(b=0)もすべて特別な場合として出てきます。
もうひとつ重要なのが、正規分布の任意の線形結合はふたたび正規になることです。X,Y が同時正規なら、どんな実数 a,b に対しても aX+bY は1変量の正規分布に従い、そのパラメータは上のマスター公式で計算した平均と分散です。
この公式が真価を発揮するのが保険・金融のポートフォリオです。X,Y を2つの損失(またはリスク資産)とすると、aX+bY は組み合わせ後のポートフォリオ損失で、その分散がリスクの大きさを表します。クロス項 2abCov の符号を負にできれば、分散を打ち消す方向に働かせられます——これがヘッジの数理です。具体例:X∼N(100,400), Y∼N(80,900), Cov(X,Y)=180 とします。単純合計 L=X+Y の分散は
Var(L)=400+900+2⋅180=1660。
一方、Y を半分だけ売るヘッジ Z=X−0.5Y の分散は
Var(Z)=12⋅400+(−0.5)2⋅900+2⋅1⋅(−0.5)⋅180=400+225−180=445。
分散が 1660→445 へ激減しました。係数の選び方ひとつでリスクが約4分の1になる——これは正の相関をもつ資産は片方を逆向きに持つと変動が相殺されるという保険引受・分散投資の核心的な直感を、マスター公式が定量的に与えてくれている例です。試験に出る性質
マスター公式
Var(aX+bY)=a2VarX+b2VarY+2abCov(X,Y)。係数は二乗で効き、クロス項に 2abCov が付く。
和・差は特殊ケース
a=b=1 で和(+2Cov)、a=1,b=−1 で差(−2Cov)、b=0 で Var(aX)=a2VarX。
期待値は線形
E[aX+bY]=aE[X]+bE[Y] は独立性に関係なく常に成り立つ。分散だけが Cov に依存する。
正規の線形結合は正規
同時正規なら任意の aX+bY がふたたび正規。確率計算は標準正規 Z への変換で完結する。
ヘッジ・分散投資の基礎
係数の符号で 2abCov を負にすると分散を相殺できる。ポートフォリオのリスク管理の数理的中核。
例で見る
X∼N(100,400), Y∼N(80,900), Cov(X,Y)=180。
合計 L=X+Y:Var(L)=400+900+2⋅180=1660。
ヘッジ Z=X−0.5Y:Var(Z)=12⋅400+(−0.5)2⋅900+2⋅1⋅(−0.5)⋅180=400+225−180=445。分散が 1660→445 に激減。
つまずきポイント
- クロス項の係数を abCov(2を忘れる)や a2b2 とする(正しくは 2abCov。係数の積に2が掛かる)
- 係数を二乗し忘れる(Var(aX)=aVarX ではなく a2VarX。負の係数 −0.5 も二乗して 0.25)
- 正規でない変数の線形結合まで正規だと思う(再び正規になるのは同時正規のとき。一般には平均・分散しか言えない)
定着クイズ
Var(aX+bY) の正しい公式は?
X∼N(100,400),Y∼N(80,900),Cov=180。Z=X−0.5Y の分散は?
正規変数の線形結合 aX+bY の分布は?