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統計・用語・点推定
非正則モデルとは、分布の『台(値を取りうる範囲)』が母数 に依存するなどの理由で、いつもの『対数尤度を微分してゼロ』という解法が使えないモデルです。一様分布 が代表例で、最尤推定量(MLE)は微分ではなく『データを全部覆う最小の 』=最大値 になります。
非正則モデル
非正則モデルとは、最尤法の『正則条件』が崩れるモデルの総称です。正則条件の中でも特に重要なのが『分布の台(サポート、密度が正になる範囲)が母数 に依存しない』という条件で、これが破れると微分による標準的な最尤推定量の解法も、クラーメル・ラオ下限も、漸近正規性も成り立たなくなります。典型例が一様分布 で、密度は
非正則の原因
分布の台が母数に依存する等で正則条件が崩れる。 は台 の右端が に依存する典型例。
最尤推定量は最大値統計量
、 の
非正則モデルの典型 の最尤推定量は?
で最尤推定量を微分=0で求められない理由は?
非正則モデルで成り立たなくなるのは?
関連問題は現在準備中です。
分布のサポート(台)が母数に依存するなどで正則条件が崩れるモデル。 が典型。MLEは最大値統計量 となり、フィッシャー情報量に基づく漸近正規性・クラーメル・ラオ下限が成り立たない。
の最尤推定量を求めてみます。尤度は各データが台に入る必要があるので で、(最大のデータより小さい )では、はみ出すデータが台の外になり尤度がゼロになります。 の範囲では が の単調減少関数です。だから尤度を最大にするには、許される範囲でできるだけ小さい を選びたい——その最小値が『全データを覆える最小の 』、すなわち最大値統計量 です。よって 。 ここで決定的なのは、最大値は尤度を微分してゼロになる内点ではなく、許容範囲の端にあるという点です。だから『』という正則な手続きは使えません。
正則条件が崩れる帰結は3つあります。第一にフィッシャー情報量に基づく議論が無効になり、クラーメル・ラオ下限が成り立ちません。第二に漸近正規性が崩れます—— は正規分布ではなく、 が指数分布に近づくといった別の極限分布をもちます。第三に収束が速い: の誤差は のオーダーで真値に近づき、正則な場合の より速く収束します。さらに は構造上つねに真値 以下なので下方バイアスをもちます(次の バイアス補正 で として補正します)。これらはすべて『台が母数に依存する』という1点から派生する、非正則モデルの特徴です。
微分=0が使えない
最大値は尤度の内点(微分ゼロ点)でなく許容範囲の端。標準的な の解法は適用不能。
CR下限・漸近正規が崩れる
フィッシャー情報量に基づくクラーメル・ラオ下限も漸近正規性も成り立たない。極限分布は正規でなく指数型。
収束が速い・下方バイアス
誤差は で正則な より速い。 なので下方バイアスをもつ(→補正)。
U(0,2θ)型の非正則モデルは区間推定の前段としても出題される
母平均の分布(台がに依存する非正則モデル)から、の最尤推定量はになる(尤度()が単調減少するため、本ページのと同じ「尤度は台の端で最大」というロジック)。2022年度問題1(6)ではこのMLEを使っての信頼区間(精密法)を求める出題があった(実現値の最大1.3から)。
()、 では が台からはみ出して尤度ゼロ。 は減少関数なので最小の で最大。
よって 。真値を とすると で下方バイアスがある。